「真実 新聞が警察に跪いた日」 高田 昌幸・著
2003年北海道新聞が北海道警察の裏金の実態を暴き、世間が注目。
著者はこの取材によって、新聞協会賞、日本ジャーナリスト会議大賞、菊池寛賞を受賞。一躍取材報道のエースとなった。
しかし、会社の幹部たちは北海道警察と裏で取引を行っていた。
記事に間違いはないのに、訂正を求められ名誉毀損で訴えられた。
最高裁まで行ったが敗れる。
その訴えの本当の意図は別にある。
鉄の結束を誇る警察組織の恐ろしさ。
新聞記者の実態と、警察との関係がよくわかる。
事件事故が起きれば記者は警察に取材にいく、つまり警察と「いい関係」にいなければ取材ができない。
したがって、警察内部のことを暴くような新聞社は当然制裁を受ける。
それを覚悟で裏金の事実を記事にした。
そして当初は「そんな事実はない」と突っぱねていた北海道警察のトップにそれを
認めさせた。
全国で29万人を擁する警察組織、国家公務員上級試験を突破したキャリア警察官は500人ほどしかいない。
北海道警察には道警本部長数人だけ、地域にずっと住み続ける地元採用の警察官と違い、キャリア警察官は駆け足で北海度を去り、出世街道をひた走ってゆく。
警察組織の上下関係、階級意識は絶対だ。
驚愕の事実もある。
覚せい剤130キロ、大麻2トンが石狩湾新港に陸揚げされ国内に流入したという事件。
北海道新聞が報じたその事件は「道警の泳がせ捜査失敗」というものだった。
しかしそれはそんな生易しいものではなかった。
暴力団関係者が道警の稲葉警察官(暴力団捜査のエースといわれていた)に持ちかけた。
「薬物の密輸を何度か見逃してほしい、その代わり、何度目かに大量の拳銃を入れるから、道警はそこを摘発すればいい」
というものだった。
上司に報告すると「ああ、わかった」と了解があり、計画は動き始めた。
2000年4月と7月に計画通り覚せい剤と大麻が密輸された。(香港から釜山経由)
しかし三回目に来るはずだった拳銃100丁はいつまでたっても香港から届かない。
大量の薬物を手に入れた暴力団関係者は、わざわざ危険を冒さなかった。
道警と税関はまんまと騙された。
当然、稲葉氏は捜査からはずされ、二年後、覚せい剤の使用で逮捕、起訴され有罪になった。
カネや取引を通じて暴力団との関係をますます深めた中での転落だった。
道警はさまざまなやらせ捜査の発覚を恐れ、稲葉氏を徹底的に切り捨てた。
どれほどの悪徳警官だっかをマスコミに喧伝した。
稲葉氏はいくつものやらせ捜査に手を染めたことを法廷で明らかにしている。
しかし、それが大きく報道されることはなかった。
刑期を終えて出所した稲葉氏は自分の体験を綴った「恥さらし」という本を出版した。
道警はこの本を完全に無視している。
新聞記事には「発表報道」と「取材報道」があり、今の新聞は発表されたものをそのまま掲載している記事が多すぎると著者は言う。
われわれは、新聞記事はすべて取材記事だと思っている。
しかし、そこで仕事をしている人たちにとって、発表したものをそのまま書くだけでは`取材`とは言えないのだ。
秘密保護法案もますます取材のしにくい状況を作り出している。
著者の危惧は、われわれとは比べものにならないほど説得力がある。
情報を扱う者として、国家権力と戦った者として、確実に日本の社会の闇は深くなっていくと警鐘を鳴らす。
報道されない重要なニュースは誰かの意図で闇に葬られる。
司法の独立などを信じてはいけないと改めて思う。
最高裁長官は時の政権・総理大臣が決めていることを忘れてはいけない。
判事や裁判官などはその配下にいる。
蛇足
沖縄の普天間基地の跡地にデイズニーランドをという話があり、信じられないことに官房長官が「全力で協力する」と言っている。
辺野古訴訟のこの時期にというのももちろんだが、特定の企業を政府が応援するなどということがあっていいのだろうか。
ユニバーサルジャパンなどほかの企業はどう思うだろう。
日本にデイズニーランドが二つも必要とはとても思えない。
それでも若い人たちを中心に大喜びする人間もいる。
楽しいことならなんでもいいという日本人が生産されている。
2003年北海道新聞が北海道警察の裏金の実態を暴き、世間が注目。
著者はこの取材によって、新聞協会賞、日本ジャーナリスト会議大賞、菊池寛賞を受賞。一躍取材報道のエースとなった。
しかし、会社の幹部たちは北海道警察と裏で取引を行っていた。
記事に間違いはないのに、訂正を求められ名誉毀損で訴えられた。
最高裁まで行ったが敗れる。
その訴えの本当の意図は別にある。
鉄の結束を誇る警察組織の恐ろしさ。
新聞記者の実態と、警察との関係がよくわかる。
事件事故が起きれば記者は警察に取材にいく、つまり警察と「いい関係」にいなければ取材ができない。
したがって、警察内部のことを暴くような新聞社は当然制裁を受ける。
それを覚悟で裏金の事実を記事にした。
そして当初は「そんな事実はない」と突っぱねていた北海道警察のトップにそれを
認めさせた。
全国で29万人を擁する警察組織、国家公務員上級試験を突破したキャリア警察官は500人ほどしかいない。
北海道警察には道警本部長数人だけ、地域にずっと住み続ける地元採用の警察官と違い、キャリア警察官は駆け足で北海度を去り、出世街道をひた走ってゆく。
警察組織の上下関係、階級意識は絶対だ。
驚愕の事実もある。
覚せい剤130キロ、大麻2トンが石狩湾新港に陸揚げされ国内に流入したという事件。
北海道新聞が報じたその事件は「道警の泳がせ捜査失敗」というものだった。
しかしそれはそんな生易しいものではなかった。
暴力団関係者が道警の稲葉警察官(暴力団捜査のエースといわれていた)に持ちかけた。
「薬物の密輸を何度か見逃してほしい、その代わり、何度目かに大量の拳銃を入れるから、道警はそこを摘発すればいい」
というものだった。
上司に報告すると「ああ、わかった」と了解があり、計画は動き始めた。
2000年4月と7月に計画通り覚せい剤と大麻が密輸された。(香港から釜山経由)
しかし三回目に来るはずだった拳銃100丁はいつまでたっても香港から届かない。
大量の薬物を手に入れた暴力団関係者は、わざわざ危険を冒さなかった。
道警と税関はまんまと騙された。
当然、稲葉氏は捜査からはずされ、二年後、覚せい剤の使用で逮捕、起訴され有罪になった。
カネや取引を通じて暴力団との関係をますます深めた中での転落だった。
道警はさまざまなやらせ捜査の発覚を恐れ、稲葉氏を徹底的に切り捨てた。
どれほどの悪徳警官だっかをマスコミに喧伝した。
稲葉氏はいくつものやらせ捜査に手を染めたことを法廷で明らかにしている。
しかし、それが大きく報道されることはなかった。
刑期を終えて出所した稲葉氏は自分の体験を綴った「恥さらし」という本を出版した。
道警はこの本を完全に無視している。
新聞記事には「発表報道」と「取材報道」があり、今の新聞は発表されたものをそのまま掲載している記事が多すぎると著者は言う。
われわれは、新聞記事はすべて取材記事だと思っている。
しかし、そこで仕事をしている人たちにとって、発表したものをそのまま書くだけでは`取材`とは言えないのだ。
秘密保護法案もますます取材のしにくい状況を作り出している。
著者の危惧は、われわれとは比べものにならないほど説得力がある。
情報を扱う者として、国家権力と戦った者として、確実に日本の社会の闇は深くなっていくと警鐘を鳴らす。
報道されない重要なニュースは誰かの意図で闇に葬られる。
司法の独立などを信じてはいけないと改めて思う。
最高裁長官は時の政権・総理大臣が決めていることを忘れてはいけない。
判事や裁判官などはその配下にいる。
蛇足
沖縄の普天間基地の跡地にデイズニーランドをという話があり、信じられないことに官房長官が「全力で協力する」と言っている。
辺野古訴訟のこの時期にというのももちろんだが、特定の企業を政府が応援するなどということがあっていいのだろうか。
ユニバーサルジャパンなどほかの企業はどう思うだろう。
日本にデイズニーランドが二つも必要とはとても思えない。
それでも若い人たちを中心に大喜びする人間もいる。
楽しいことならなんでもいいという日本人が生産されている。
by 2006taicho
| 2015-12-17 04:00
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