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隊長ブログ

ひとり日和

短編小説 キャベツ 最終回






「来月?アメリカに行く?」

「うん どうかな」

「・・・・まあ いいんじゃない」

「そうか じゃ行こう!哲夫に会いに!」

「役場への申請書は俺が送っておくから 留守の担当は大石くんたちでいいよな」



「今度はおみやげなにを持っていこうか?」

「うーーーん 漬物ばっかりもねえ 」

「まあ うちの漬物はちょっと減らして・・・」

「まあ まだ日があるから また考えよう」




早田さんの息子は国から派遣されているので旅費は無料。

この制度は毎年1回使うことが出来る。

宿泊は息子の家だからこれも無料。

小遣いをもっていけばことたりる。

早田さんたちがいない間は役場の職員4人が畑の面倒を見てくれる。

なにかあればメールやネットで早田さんに連絡することができる。















15年前、

政府は農業に従事している農家を実質公務員化した。

そして北海道から沖縄まで9ブロックにわけ、各地の農産物を安定供給できるように指定した。

各農家は毎日収穫予定量を農水省に報告。

農水省はそれを市場に開示。

わかりやすく言うと農産物は水や電気と同じ、という発想。




農業希望者は飛躍的に増え、そのレベルも格段に進歩した。





こういうシステムが12種類の指定農産物のすべてに採用されている。

野菜だけでなく肉、乳製品などにも適用されている。



日本の農家の勤勉さを世界にしらしめたのが、映画「百姓 とれたぞうーーー」だった。

監督はNPO法人出身。

アカデミー賞の外国映画作品賞を受賞。

自給自足と愚鈍なまでの農民の生活をリアルに映し出した。

映画は農家の青年がアメリカにわたるところで終わる。







10年以上前、

政府は教育の大改革にも着手した。

特に大学。

すべての大学生は酪農、農業、漁業、林業、環境について現場体験を義務づけた。

期間は2年。

3か月の海外留学もそのなかに組み込まれた。

時の文科省大臣は日本人に語学力をつけさせることは国策とまで言い放った。




高校までは義務教育。

環境と語学とスポーツは必修。

選択制になっているが実質的に必修になっているのはアルバイト。

週二回まででバイト代は各自治体が出す。

高校生を雇った企業・個人事業主には同額の補助金がでる。


つまり、食料の安定供給と地球規模の安心。

その人材を育てるための教育。

体を動かして働くという実感の習得。

頑健な体力は食べ物からという考えと国際的視野の育成。



政府はそれを機会あるごとに訴えた。

農業指導員を各国に派遣した。

そして各国はそれを少しずつ理解して行った。

世界の砂漠の7割を肥沃な畑にしたのは日本の企業の卓越した技術だった。

5年前から、国連の事務総長は日本人。


世界100カ国以上の小学校の教科書には広島・長崎の原爆の実態が記述されている。


短編小説 キャベツ 最終回_d0098363_19485737.jpg


終わり
by 2006taicho | 2010-05-02 19:49 | ひとり日和 | Comments(0)

おかしいことはおかしいと言う


by rei7955