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 小榑(こぐれ) 雅章 (著) 
 2016年6月出版 1998円




世界で唯一、広告をとらない商業雑誌、「暮らしの手帖」の創刊は1948年。
筆者は1960年入社し、名物編集長花森安治のもと、24年間勤務した。
当時の暮らしの手帖のいろんなエピソードが書かれている。

今の天皇陛下の父、昭和天皇の姉が一般の家に嫁いでいた。
その人に毎日のくらしについて、大胆にも、原稿を書いてもらっている。
食糧配給の苦労や、子供の服を自分で縫っているなど、庶民と変わらない生活を知り、読者は感動する。
今ではちょっと考えられない発想で実現している。

掃除機の普及率が7%のころ、商品テストをやった。
団地などを突然訪問し、掃除機の中のごみをもらいにまわり、家庭から出る「本当のごみ」を使ってのテスト。
消費者は、暮らしの手帖の商品テストを待って、電気製品を買ったという。
メーカーの社員は「自分たちにはできません」といって帰っていったという。

若いころ、著者が辞表を提出したときの話、花森は
「会社に迷惑をかけると考えることはない、君は大卒でほかの仕事をしたことがないのだから、辞めて、次の仕事も同じ編集者の仕事につくことになるだろう。なら、俺のそばにいて俺の技術を盗め、編集者としてもっと学んでから辞めればいい」そういって辞表は「預かっておく」といわれる。

読者カードを大切にし、次号の予告をはがきで紹介し、宛名は絶対に手書きで、社内で文字がきちんと書ける人しか担当できなかったという。
その読者カードがその後、商品テストなどのモニターメンバーになり、商品テストを支える。

自分たちは一庶民なんだ、人を見下したり、教えてやるみたいな姿勢とか、えらそうな記事を書くんじゃない、われわれは庶民のなかの一人に過ぎない「なかのひとりはわれにして」なんだ。

暮らしの手帖は広告を取らないことで、どこの雑誌よりも信頼感はあるかもしれない、それを裏切っちゃいけない。
この雑誌は庶民の役に立つことが重要なんだ。
そして、もう国にはだまされないぞ、という運動体なんだ。

花森氏が66歳で亡くなって38年、暮らしの手帖は今も発行されている。







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by 2006taicho | 2016-10-05 00:13 | 最近読んだ本 | Comments(0)

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国家戦略特区の正体 外資に売られる日本
郭 洋春 集英社新書 中古394円




026.gif国家戦略特区とは
地域を限定した大胆な規制緩和や税制面の優遇で民間投資を引き出し、“世界で一番ビジネスがしやすい環境”を創出するのが狙い。
2013年6月に特区創設が閣議決定され、12月に成立した国家戦略特別区域法では医療や雇用、農業など計六分野で規制の特例が認められた。

本来の経済特区とは
主に途上国が工業化を実現していく際に、外資を呼び込んでその発展を促すための手段。
だから、日本には本来は当てはまらない。

狙いはTPPのテストであり、地域を限定しての規制緩和策。
すでに地図のように日本各地で指定されている。
驚くのはその地区合計でGDPの4割に達するという。
当時の推進役はグローバリズム大賛成の、あの竹中平蔵氏。

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(画像クリックで拡大します。)






2013年8月に行われた、政府主催の「有識者等からの『集中ヒアリング』」で対象となった規制・制度改革の提案134件のうちなんと42件が、モルガン・スタンレーMUFG証券のエコノミスト、ロバート・フェルドマン氏によるものだった。
25の「有識者等」が発言・提案を行ったが、3分の1はフェルドマン氏からのものだった。

2015年11月には、ドナルド・ラムズフェルド元国防長官とリチャード・アーミテージ元国務副長官へ旭日大綬章叙勲が送られている。
ラムズフェルドといえば、元国防長官で、アフガン戦争やイラク戦争の指揮官。
アーミテージといえば、元アメリカ国務省副長官で、アーミテージレポートで日本に様々な要求をしたことで知られる人物。
(山本太郎が国会で見事に指摘していた)

特区指定されたら国内法が及ばないので、経営はやりやすくなる。
産業ルールが二重になり、特区ではない地区との格差が生まれ、労働環境は経営側に有利に変更可能になる。
日本の伝統技術は軽視され、労働者の基本的人権などは侵害されやすくなる。



確か、大手コンビニチェーンも乗り出して農産物を売っている。
日本の農業全体のあり方、町のスーパーや八百屋さんのことなど眼中にないという戦略だ。
大手コンビニチェーンの社員は、競合他社に勝つことを目標にされ、際限のない利益拡大路線というレールの上を走らされ、日夜、便利で、早い商品の開発に追われている。



安倍さんの言う、世界で一番ビジネスがしやすい環境、がどんなことになるか著者は鋭く、わかりやすく解明している。



現在の資本主義は、右肩上がりの成長は限界に来ていると、多くの研究者が唱えている。
つまり、先進国は成熟しきってきているということ。
しかし、企業は赤字は許されない、経営サイドと労働者はそこで完全に一致している。
そして支配者層は、一番儲かるテロや戦争を引き合いに出す。
同時に、最下層の貧困や差別(難民も)を常に生み出し、戦地要員として確保する。

地球上にはまだまた発展途上の不安定な国があるからだ。
途上国援助という名目で、新規得意先を開拓し、儲かるシステムを構築し、右肩上がりを確保してゆく。

人としての正義感、公共性、共助という意識を奪ってゆく。








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by 2006taicho | 2016-09-17 14:19 | 知っておきたいこと | Comments(0)

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「戦後政治を終わらせる 永続敗戦のその先へ」
NHK出版 白井 聡 2016年4月出版




この本はおすすめです。
今年出版された本です。
安倍さんがよく言う「戦後レジームからの脱却」について、著者は安倍さんとはまったく違う認識で論じます。

一言で言えば、戦後政治史ともいえるかもしれません。
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日本人は戦争に負けたことへの総括が済まないままここまで来た。
アジア近隣諸国に謝罪をしてこなかった。
戦争は、一部の軍属たちがやったことであり、自分たちは被害者であるという認識しか持ってこなかった。
安倍さんのおじいさんの岸信介をはじめ、戦犯が大量に恩赦された。
そして、国の主要ポストになぜ就いたのか。
戦争犯罪者が戦後も国の主要ポストに就く、そんな国は普通はありえない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そう言えば、村山談話とか、戦後70年談話とか、メデイアは相当騒いだ。
世論も、なぜ今更謝罪を口にしなければいけないのかという感じだった。

同じ敗戦国ドイツは、きちんと謝罪をし、賠償金も支払って出直すという態度を世界に示したことによって、今やヨーロッパの中心国にまでなっているのと対照的だ。

戦後、アメリカ文化が日本に押し寄せた。
アメリカナイズってやつだ。
アメリカ文化に世話にならない人がいただろうか。
私達世代は自然とアメリカに憧れるようになった。

冷戦が終わり、世界は東西対立という概念から開放された。
資本主義と社会主義(あるいは共産主義)の対立の終わり。

資本主義は、社会主義の国があったおかげで、分配という政策を取らざるを得なかったという指摘は勉強になる。
それは医療制度や健康保険制度、年金制度などの社会保障制度に現れている。
資本主義国であっても、そういう制度を作らないと、国民は社会主義国を羨むようになってしまうからだ。
しかし、その代表だったソ連が崩壊した。
そこから世界は次第に経済偏重へと傾く。
冷戦終結の影響は、もう「富の分配」をしなくてもよいという判断ができたことかもしれない。

レーガンやサッチャー、中曽根時代からだ。
小泉政権時代になって'勝ち組負け組'と言われ始めたころだろう。
世界は金融緩和策によって、富めるものは富み、貧困格差を拡大するという経済偏重主義。

冷戦終結後、日本は対米従属からの脱却を目指すべきだった。
なぜなら、日米共通の敵がいなくなったのだから。

しかし、その後、世界はテロ組織との対立という新たな標的を作り出す。
9.11がスタートだ。
心配・不安・恐怖は、ナチスが当時、国民を欺くために使った手法だ。
日本の支配層・既得権益者は、中国、北朝鮮を、なにをしてくるかわからない国だと、恐怖と不安をTVメデイアでばらまく。
日本国民は、いざとなったらアメリカが出てきてくれると思い込んでいる。
日米安保はだから必要だというが、アメリカが日本を守るかどうかは、アメリカの議会の承認が必要だということはあまり知られていない。
なのに、日本人はアメリカが無条件で守ってくれると思っている。
中国の船が日本の領海に侵犯すると、アメリカの艦船が威嚇に来てくれるから助かると思わされている。
本当は自衛隊の艦船で十分なのに。(日本の軍事力は世界4位)
アメリカは、建前上、警戒する様子をみせることで、在日米軍の必要性をアピールするのが任務。
中国が本当に攻撃することなどありえないことは十分わかっている。
それと、日本に武器を売るという任務もある。
窓口は、たいした議論もなく去年創設された防衛装備庁。

日本では二大政党制といわれて、民主党が政権をとったこともあったが、結局は二年ほどで失脚した。
そしてあきらかになったことは、自民党でも今の民進党でもどっちでも同じということ。
民主党政権の最後は野田自民党と言われたほどだ。
そして、国民は「やっぱり民主党じゃだめか、官僚を使いこなせないか」ということになっていく。
民主党で唯一、日本の自主独立を図ったのは、「最低でも県外」と言った鳩山さんだけです。
アメリカの怒りに触れて失脚させられましたが。

参議院議員の蓮舫代表にはこころざしが見えない。
会社でいえば、課長から部長になって嬉しい、程度にしか見えない。
原発や沖縄についてしゃべらせれば、ボロが出そうでこっちが心配になりそうだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
筆者は、沖縄の今の戦いこそが、戦後レジームからの脱却の一歩だといいます。
つまり、アメリカの要望だからと、日本国民である沖縄県民に犠牲を押し付ける、日本国政府との戦いです。

自民党が結成された55年体制は、もう20年以上前にその存立理由を失っている。
今の安倍さんたちは、対米従属そのものを目的化してしまっているという。
それと経団連をはじめとする、既得権益集団体の権益の保護維持。

だから今の安倍さんたちの政治手法は露骨だ。
原発推進、安保法制の強行採決、社会保障費の削減、武器輸出三原則の廃止、本来なら、憲法改正をやってからでないとできないことをやってしまっている。
露骨な対米従属だ。
保守も革新もないのです。
今の沖縄が政治的には最先端にいると述べています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

3.11東北大震災と福島原発で、われわれはたくさんのことを学びました。
ボランテイア活動の有用性、専門家の後ろ盾・意見のちがい、原発の怖さ、廃炉年数、放射性廃棄物、政府・東電の隠蔽体質、マスコミ報道の姿勢、風評被害。

また一方でたくさんの支援団体ができたことす。
これは、声をあげる人たちのうねりのようなものだと言えるかもしれません。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
筆者は、街頭にでて、デモで声をあげてもなんにもならないから、というのは奴隷の合理性だといいます。
「99%と1%」というデモでウオール街で抗議した人たちは、その後、バーニー・サンダースの支援に回っています。
つまり、そこで知り合い、輪をひろげ、連絡体制、協力体制が少しずつ出来上がっていくのです。

「幼稚園落ちた、日本死ね」という一人の主婦の書き込みが、拡散して今や社会問題に発展していきます。
これはそういう意識した人たちがきちんと声をあげたからです。

今ようやく、日本人の中に、立ち上がってもいいんだ、そう思っている人が結構いるんだという認識が広がりつつあります。
今まで、「どうせ無理」という自己規制していた自分から目覚め始めているのも確かでしょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
つまるところ既存政党では無理だということですね。
ですが、投票しなくてはなりません。
投票しないということは、どんな世界になっても受け入れるということになります。
そういう覚悟があるでしょうか。


投票行動だけは続けて、意思表示をしながら現状から脱却する方策を編み出す必要があります。

「保育園落ちた 日本死ね」という書き込みの意義はあったのだと思います。

対米従属という戦後レジーム(体制)からの脱却をスタートさせ、並行してアジアの国々との連携を深めることが、日本の歩む道ではないでしょうか。
アジアの人口は世界の6割にもなります。
そのことが世界情勢に公平に反映されていないことが、問題だと思います。
欧米各国の余計な口出しを許してきたからです。
日本人にはアジアのリーダーとしての素質も見識もあると、個人的には思っています。






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by 2006taicho | 2016-09-16 03:37 | 最近読んだ本 | Comments(0)


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           「1974年のサマークリスマス」柳澤 健 集英社(2016年5月)



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 1960年後半~1970年代は深夜放送の時代でもあった。
 「オールナイトニッポン」「パックインミュージック」は人気を二分していた。
 放送時間は深夜1時から3時までの二時間と3時から5時までの二部構成だった。メインは一部のほうで、時のDJは中高生を中心に絶大な人気があった。
 はがきでのリクエストという手法が定着したのもこの時期だった。
 しかし、この本は大人気だった、なっちゃんちゃこちゃんのほうではない。二部の放送を担当したTBSのアナウンサー・林美雄にスポットをあてた。

 深夜3時からのラジオ放送なんかにスポンサーも付かない時代で、TBS内部でも誰も期待していない番組だった。
林はそこで日本映画、埋もれている唄や歌手を次々と紹介する。当時の日本映画は斜陽の時代で衰退の一途をたどっていた。林は自分で観た映画を自分の感性で熱心に紹介し続ける。
藤田敏八監督「八月の濡れた砂」その主題歌を歌った石川セリや、デビューしたての荒井由美や山崎ハコをスタジオに呼んだ。
そしてそれが次第に拡散してゆき、リスナーが増え、さまざまなイベントが行われる。
当時のリスナーたちの証言や、ゲストの話、同期入社だった久米宏や先輩アナウンサーたちが当時を振り返る。
林美雄は2002年7月ガンで亡くなる。享年58歳。
林の息子は、父親の危篤のしらせを学校で聞いた。
担任教師から打ち明けられる。
「今まで黙っていたけど、私も君のお父さんの放送を聞いていたんだよ」

深夜放送世代にはたまらない本だと思う。
当時の自分たちの心情が、いろんな出来事とともに思い浮かぶ。
時代背景もあるのだろうけど、当時のアナウンサーたちの社会への意識レベルが高いことがよくわかる。

 


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ユーミンの初期のアルバム二枚は、十代のころに作っておいたものらしい。
ユーミンのファンクラブはこの番組の熱心なリスナーが作った。
しかし、ユーミンは商業主義に走って、初期のファンを失くし、ファンクラブも解散。
たが、林は常に変わらずユーミンに接していた。









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by 2006taicho | 2016-08-19 00:33 | 最近読んだ本 | Comments(0)

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 検察の大罪
 三井 環(たまき)
 講談社 2010年出版

 
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2002年の事件。



検察には調査費として年間6億円が予算計上されていた。(当時)
そのすべてが、実は検察幹部の遊興費として使われいた。
高級料亭での飲食、高級クラブでの豪遊、ゴルフ、マージャンなど、検察のトップ一人だけで、年間1億円以上使っていた。
高級住宅を毎年買えるほどの税金の使い方だ。
作者が想像できる範囲だけでも、20年間120億円以上の裏金が存在している。
それを現職の検察幹部が実名で告発しようとしたが、組織の力によって本人を別件逮捕し起訴した事件。
逮捕当日、作者はテレビ朝日の「ザ・スクープ」に出演し、鳥越俊太郎のインタビューを受ける予定だった。
しかし、その3時間前に逮捕された。
(実はこの取材内容は録画で後日放送予定だったが、検察はそこまで把握していなかったらしく、緊急逮捕してしまう)



法廷ではなんと9人の検事を立て、検察側は異例の対応をした。
勤務中にデートガールとホテルに行ったとか、ありもしない容疑をかけて、それをマスコミに意図的に流し、マスコミはそれを書き立てた。
(これは法廷で偽証が証明されてしまう。このときのデートガールはその後、別の事件で殺害されてしまい、本人の証言は永久にとれない)

そうして、”悪徳検事”という印象を国民の頭に刷り込んでいった。

検察のマスコミ操作(リーク)はしょっちゅうやっていて、手口は巧妙。
元プロ野球選手の清原が逮捕された時の映像が、なぜあるのか、国民は疑問に思わない。それよりその瞬間の映像に興味がいってしまうからだ。実はこれは検察のリーク。某マスコミに情報を漏らし、カメラの位置まで指定されている。これでこのマスコミは検察に恩を感じる。そして以降は検察に批判的な記事は書けなくなるという段取り。
そうでなければ、容疑者逮捕の瞬間はもっと沢山あっていいはずだ。
庶民、マスコミが飛びつくネタを熟知しているというわけだ。



結果は、最高裁まで行って上告を棄却され、1年半の有罪判決が確定。
悪徳検事の判決など国民は気にしないし、有罪は当然という反応。
検察の国民意識の誘導は成功した。

本人は現在刑期を終え、検察の不正を明らかにする運動を続けている。





当時の検察の大きな過ちは、時の政権(このときは小泉政権)に恩を売ってしまったこと。
恩の内容は、当時の司法のトップ森山法務大臣に「裏金などは存在しない」と国会で言いきってしまってもらうこと。
検察幹部は、当然、大物政治家のもとへ行き、国会答弁を働きかけた。

そうしなければ、検察は世論の非難を浴び、検事総長以下、幹部は全員懲戒免職になるし、使った金の全額返金を求められる。
それにもまして、検察OBへも追求の手は伸びる。
つまり、検察は崩壊してしまうほどの一大事件に発展するからだ。


以来、検察は時の政権の顔色をうかがいながら捜査をするようになる。
特に自民党の政治家の不正などには、決して政治家自身には害が及ばないような捜査をするようになる。
それは今も続いていて、甘利大臣なども結局不起訴になっている。
検察審査会で起訴相当になろうとも、形式的な裁判を行えばそれでいい。
結論は最初から決まっているからだ。
なにより、司法(警察・検察。裁判所)はわが手にあるのだから。



実はこの裁判以外にも、検察と山口組幹部との接触の話も出てくる。
山口組が二億円用意し検察幹部に働きかけたという疑惑だが、ここでは省略。



検察はこれで、政治家への告発は時の政権にお伺いするようになってしまう。
告発当時、作者は当時の民主党の管直人議員(そのご首相)にも働きかけ、国会で証人喚問をうけ証言する予定だった。
従って、検察にとって、政権が自民党以外になることは検察の危機につながる。
検察をも抱え込むことに成功した自民党の横暴ぶりがここからも予想がつく。


作者の告発の意図はこれにある。
不正を暴くことを本来の使命としている検察が、政権に恩を売ってしまっては、もうこれは検察ではない。(恩は今も継続している)
血税でこんなことをしているんだということを、一人でも多くの国民に実態を知ってもらいたい。
そして検察の出直しを要求してもらいたい、ということ。



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 堀田力(左)と河上和男(右)

 二人とも元最高検検事。

 この事件に関しては無言を貫いている、世間の評  判はいいようだ。







不安と恐怖の植え付け

この裏金告発事件で担当した検事たちは全員出世している。
本来なら辞職している人たちなのに。
検察の闇を守った功労賞?ということだろう。


検察担当の記者たちは裏金のことは常識だという。
しかし、それを記事にはできない。
報復が怖いからだ。
良心は痛むが、自分の身になにが降りかかるか分からないからだ。
しかしそれではメデイアの使命は果たせない。
それどころか、無言を貫けば巨悪に加担することになる。

今のメデイアが委縮してしまっているという理由がここにある。
正義と勇気はどこにあるのだろうか。
じぶんではない誰かにお願いする生き方。
家庭で世代で分野で事件で事故で事象でさまざまなところで、おかしいと思えることが毎日発生している。



ヒラリーさんがサンダースさんに苦戦している事実に希望を持ちたい。
世界的企業からあれほどの献金を受けながら、アメリカの庶民を納得させられない。



人として良心を駄目にしないために、自分になにができるだろう。

知識を得たら、あとは署名したり、集会に行ってみたり、それが面倒ならHPでの閲覧やメールでの問い合わせ、最後は投票・・・・
家で座っていてもできることはある。
そういう自分に向き合えるかどうか、これも度胸? 









  
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by 2006taicho | 2016-06-06 00:18 | 最近読んだ本 | Comments(0)

「検事失格」 市川 寛

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「検事失格」 市川 寛 新潮文庫2012年
 amazon中古20円
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裁判官の実録本を読んだので、次は検察官の実録もの。
この人は検事を12年間やりその後辞職。
業界ではヤメ検というらしい。

司法修習時代から始まり、取り調べのノウハウをたたき込まれる。
やくざと外国人には人権はない、机の下から向こうずねを蹴るんだよ、調書を読み上げ、これは俺の調書だよと騙して署名させる、釈放を餌に虚偽の自白を強要するなど。
その後いくつもの地検を転々として、最後に佐賀県で問題を起こし検事を辞めるまでの12年間が克明に記されている。

上司の意にそわない調書を見せるとやり直しを命じられる。
とにかくなにがなんでも「割れ」、「立てろ!」の一点張り。
(自白させろの意味)

そのあいだうつ病で2回倒れている。

検事は外で飲むとなにかと危険なので、飲むときは酒屋に配達してもらい、検察内部で飲む。
外で飲むのは検察で決められている1~2軒の飲み屋だけ。
会話も検察官同士でしか話をしないので、価値観は固定され、視野狭窄になるのも当然だという。
出世の早道は特捜だが、1~2年でお払い箱になるのはざら。
自白させるのがうまいものだけが出世してゆく。
裁判官は検察の調書をもとに裁判を進めるので調書の任意性が非常に重要だという。
仮にその任意性(被疑者が自ら自白した)が疑われるような調書は作ってはならない。
だから、最初の”見立て”(容疑のかけ方、シナリオ)が重要で、その見立てに不要な供述は切り捨てる。
有罪率99.9%の理由がここにある。



現在は弁護士として主に冤罪を防ぐための活動をしている。

とにかく良心があったらとてもじゃないけど勤まらない仕事だ。
本当はその逆であるべきはずの仕事なのに。








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by 2006taicho | 2016-05-26 05:39 | 最近読んだ本 | Comments(0)

最近つくづく思うのは、2000年前後から、なにがどうなっているんだろう、という疑問がふつふつと湧いてくること。
いまから16年前、21世紀になってからだ。

取材に基づいたルポやドキュメンタリーもの、あるいは学者の書いた分析ものなど
の本を読むと、大体その兆候が現れたのが2000年前後だと書いてある。
以下に紹介するこの本もその一冊だ。
なにがどうなっているのか、そのうち分かってくるのかもしれないとおもうけど。




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  瀬木比呂志
  2014年講談社現代新書
  amazon中古24円






  
  筆者は30年間司法の世界に身を置いていた元裁判官。







裁判所、裁判官という言葉から、あなたはどんなイメージを思い浮かべるだろうか。
おそらく、少し冷たいけど公正、中立、廉直、優秀な裁判官、杓子定規で融通は利かないけれど、誠実で、筋は通すし、出世などにはこだわらない。
そのような裁判官によって行われる裁判は、やや市民感覚とは、ずれるところはあるにしても、おおむね正しく、信頼できるものである-----
そう考えるのではないだろうか。
しかし、実態はそのようなものではない。


この本の「はしがき」はこういう書き出しで始まる。
そして筆者が裁判官として経験したことを明らかにし、現状の問題点、改革の方向性などを指摘してゆく。

実際の裁判官は---
訴訟が起きればまず執拗に和解をすすめ、数をこなすことに精を出す。
常に自分の評価を気にし、出世に支障のあることには目もくれない。
霞が関の官僚とまったく変わりなく、市民の感情などは気にも留めず、俗物的な人間である。

裁判員制度の本当の目的はなにか、なぜ導入したのか。
裁判所の裏事情が見えてくる。




そして現状をこう表現する。

日本の裁判官は、実は見えない「檻」、「収容所」のなかに閉じ込められた「制度の囚人」だ。
いまのままでは市民のための裁判などはまったく期待できない。



法の番人であるべき裁判官、正義をもって人を裁くべき裁判所の未来は、いったいどうなってしまうのだろうか。
被害は確実にわれわれ市民にやってくる。

勇気ある行動、正しい言動より、少々間違っていても得になること、有利になることが優先され、それを大目に観る現代。
中古本とはいえ、この内容でこの価格では恐縮するほど。









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by 2006taicho | 2016-05-25 10:04 | 最近読んだ本 | Comments(0)

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「流星ひとつ」沢木耕太郎 新潮社 2013年出版
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沢木耕太郎は今から30年以上も前の1979年に歌手の藤圭子にインタビューした。
そのとき、藤圭子は28歳で引退宣言をしていて、年末の最終公演を控えていた。
浪曲師の両親のあいだに生れ、中学を卒業した日に東京へ出てくる。
幼いころの貧乏の苦労話、目の不自由な母親への思い、父の暴力におびえて育ったこと、19歳で前川清との結婚、離婚の真相、のどの手術によって、声質が変わってしまったことへの絶望感。

インタビュー記事は完成したが、藤圭子が、もし将来歌手に復帰することがあったらこの本が足かせになるのではという理由から出版は見送られていた。
藤圭子は最終公演を終えるとハワイへ旅たち、そのごニューヨークに移り住む。
沢木と藤圭子はそのご二度と会うことはなかった。
引退した藤圭子はその後、宇多田氏と結婚し、娘を授かる。
宇多田氏とはそのご離婚し、娘のヒカルは有名な歌手になり、藤圭子の娘だということが世間に知れる。


そして2013年藤圭子は自殺。

沢木は再度出版社に相談し、編集者の一声に出版を決意する。
「これはヒカルちゃん読んでもらわないと」

それにしても娘のヒカルも19歳で結婚し、その後離婚、活動休止宣言したのも同じ28歳という年齢。

純粋で歌うことに真剣だった28歳の藤圭子を世間に知ってほしい。
なにより、母親の病気のことしか知らないだろう娘の宇多田ヒカルに知ってほしい、引退後、こころの病で自殺した元歌手というイメージで藤圭子を終わらせたくない沢木はそう考え出版を決意した。


演歌は好きじゃなかったけど、藤圭子は好きだったなあ。
特にデビューしたときのヘアスタイル。
演歌を歌う人で初めてファンになった覚えがある。
人との付き合いというか、不器用そうな感じがよかった。
なにより唄に迫力があった。
自殺のニュースを聞いたときは本当にショックだった。
ちあきなおみは復活してくれないかなあ。
それにしても前川清はいい人なんだなあ・・・・。














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by 2006taicho | 2016-05-06 02:37 | 最近読んだ本 | Comments(0)

「火花」 又吉直樹

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「火花」又吉直樹 文芸春秋 2015年出版



ご存知芥川賞作品。
なんでも200万部を突破したとか、凄い売れ行きです。

今回は島の図書館で借りました。
これまで島の図書館に行ったことがなかったので見学がてらでした。
町役場では数年後には島の図書館を新たに建設する予定です。

内容はいたって地味なストーリーです。
売れない芸人の日常が描かれています。
吉祥寺や池尻大橋など、個人的に懐かしい場所が出てきて親近感を覚えました。
お笑い芸人、漫才師がいかに努力し、悩んでネタを作っているかが実感できます。


★追記
人を笑わせたい、という人間&職業は完全に認知されている。
漫才師になりたいと親に宣言したとき、親の反応は昔とは大違いだろう。
「もっとまともな仕事を選びなさい、人に笑われるような仕事なんかするために育てたんじゃない」
今なら
「本当にやりたいの?だって競争がすごくて大変な世界でしょ?やれる覚悟あるの?売れなかったらどうするの?」
職業として認知されている。

高校生のころ、あの萩本欽一にあこがれた。
落語や、漫才、声帯模写に興味を持った。
チャップリンに感動した。
真面目な会話に笑いを入れることを覚えた。
それを理解する人と理解に苦しむ人がいた。
お笑い探検隊の基礎になった。












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by 2006taicho | 2016-04-18 00:52 | 最近読んだ本 | Comments(0)

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君たちはどう生きるか(1937年出版)
吉野源三郎(1899-1981年)岩波文庫 


約80年前の出版。
この本は1935年に山本有三が編纂し出版された「日本少国民文庫」全16巻のなかの1巻。(写真右)


当時の日本は満州事変でアジア大陸に侵攻、盧溝橋事件が起こり、この本が出版された年は日中戦争がはじまった年だった。

全16巻の編纂をした山本有三は、吉野に語ったそうだ。
「軍国主義の勃興とともに言論や出版の自由は制限され、自由な執筆が困難になってきている。
少年少女に訴える余地はまだ残っているとし、せめてこの人々だけは時勢の悪い影響から守りたい、と思い立たれました。 
少年少女こそ次の時代を背負う大切な人たちである。
偏狭な国粋主義や反動的な思想を超えた、自由で豊かな文化のあることを伝えておかなければならない、人類の進歩についての信念を今のうちに養っておかなければならない」


こういう作家がいたんですね。

還暦を過ぎた自分でも本当に読んで良かったと思いました。
今、子育て中の親も是非読んでもらいたい。
もちろん、少年少女向けに書かれた本なので若い人も。
Amazonではベストセラー1位になっていた。
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by 2006taicho | 2016-04-10 10:21 | 最近読んだ本 | Comments(0)