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カテゴリ:最近読んだ本( 60 )

「証言拒否 上・下」

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『証言拒否 リンカーン弁護士(上・下)』

マイクル・コナリー (著), 古沢 嘉通 (翻訳)

(講談社文庫) 文庫 – 2016/2/13

amazon中古 11円

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マイクル・コナリー(Michael Connelly、1956年7月21日-)
フィラデルフィア出身のアメリカの探偵・犯罪小説家。
フロリダ大学を卒業し、フロリダやフィラデルフィアの新聞社でジャーナリストとして働く。彼の手がけた記事が、ピュリッツァー賞の最終選考まで残り、ロサンジェルス・タイムズ紙に引き抜かれる。
日本ではハードボイルド派小説家に分類されることが多い。



内容(「BOOK」データベースより)
ローン未払いを理由に家を差し押さえられたシングルマザーが、大手銀行副社長撲殺の容疑で逮捕された。
彼女は仲間を募って銀行の違法性に抗議するデモを繰り返す有名人。
高級車リンカーンを事務所代わりに金を稼ぐ、ロスきっての人気弁護士ミッキー・ハラーは社会的注目を集める容疑者の弁護に乗り出す。



サブプライムローンを背景にした法廷裁判もの。
面白いことは面白い。
まるでハリウッド映画のシナリオを読んでいる気分になってしまうけど。
法廷場面の描写、陪審員へのアピール、判事の性格描写、検察側との駆け引き、金融知識など非常に幅広い。

タイトルの「証言拒否」は検察側の証人がそれを行使したため、判決に重大な影響を与えることになったことを示唆している。
結末はこれまた意外なことに。

アメリカ映画の主人公は「バツイチで娘を溺愛している」という設定が多いのはなぜなんだろう。
前妻には冷たくされながらも、娘に会う時は喜び一杯になる。
そしてそれが生きがいになり、ひとたび娘に危険が迫ればどんなことをしてでも救いだすという設定。
あとは、何か訳ありの過去をひきずってたりするのも定番手法。
まあ、そうしたほうが生身の人間くさくて共感を呼びやすいのだろう。
つまり主人公は、「家族をなにより大事にする人物」という前提が流れている。
アメリカの実態がそうなっていないからだろうか。

もう一つは、アメリカ映画は上下関係がはっきりしていること。
ボス(上司や先輩や姉弟)が部下になにか指示するときは、かならず命令口調。
「今すぐだ、行って来い」「ドアを閉めろ」「ここから出て行け」「俺の前に二度と現れるな」など。
有無を言わせない口調が多い。
日本映画ではほとんど使われないセリフ。
日本映画だと「すぐ行ってきてくれ」「そんなことでどうする」「縁を切るっていうのか」
まあ文化の違いといえばそれまでだけど、相手を圧倒しないという日本人の思いがあるのだろうと思う。

それと、いつも思うのは、挨拶がわりに必ず相手の名前を言うことだ。
知り合いの家を訪ねた時は「やあジョージ調子はどうだ、クリス(奥さん)は元気かい」と言う。
ところが緊急事態が発生して、主人公が急いでいるときも「ジョージ」「クリス」と必ず名前だけは口にする。
言われた相手もその一言で今日はなにかあったんだと察する。
そして即、本題に入る。
初対面でも「ジョンでいいよ」とか言う。
日本ではまずこれはない。
それなりに親しくならないと名前では呼ばない。
親しくなっても年上なら決して名前では呼ばない。
「斎藤哲生」を哲生とは呼ばない。
名前を呼び捨てに出来るのは相手が年下が同じ年の場合。

この小説も例にもれず、そういう前提になっている。
別れた妻の職業は検事というニクイ設定になっている。

作者のヒット作品、刑事 "ハリー・ボッシュ" シリーズが有名で、読む時は発表順に読んだほうがいいらしい。





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by 2006taicho | 2017-10-24 17:33 | 最近読んだ本 | Comments(0)

「太平洋戦争」アメリカに嵌められた日本

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「太平洋戦争」アメリカに嵌められた日本
マックス・フォン・シュラー (著)

2017年3月 単行本 ¥ 1,512


d0098363_4293090.jpg著者のマックス・フォン・シュラー氏は、米国生まれ、米国籍のアメリカ人である。
1974年に米軍海兵隊として岩国基地に来日。
退役後は、国際基督教大学で政治学を学び、役者、コメンテーターとして日本で活動するが、歴史研究家としての一面もある。
本書は、第二次世界大戦について、今日の日米関係について、あるいは、
世界の状況について、現在のアメリカ人一般がどのように見ているのか、考えているのか、「アメリカ人の本音」を赤裸々に綴ったものである。
圧巻なのは、歴史研究家として、日米戦争の真実を検証し、日本が米国によって巧みに戦争に引き込まれた真相を記述した箇所である。
シュラー氏は、日本人女性と結婚し、現在は日本に住んでおり、日本人が日本の将来を考えるにあたり、米国の本当の姿を知っておいて欲しいという気持ちから本書を執筆したという。


アメリカの外に出てからさらに歴史を勉強して理解したことは、「アメリカ例外主義」と称すべき哲学があることだ。これは、「神様はアメリカを選んだ」という宗教的信念に基づき、「アメリカを世界で最上位の国」と位置付けることで成り立っている。同時に、「神様は最上位の国であるアメリカに世界の国々を支配する使命と、世界の人々をアメリカのキリスト教(プロテスタント)に改宗させる使命を与えた」とも考えられてきた。
白人は他人種を奴隷にしてよいという教えが聖書に書かれている。


(著者が)安芸の宮島に案内したとき、アメリカ人は私の説明に耳を傾けなかった。
つまり、アメリカより古い歴史があることなど訊きたくもない。
知りたくもない。
アメリカが世界一自由で正義の国であり、安保条約で日本をまもってやっている国だから、もうちょっと妥協しろ、アメリカのクルマを買えという論理になるのだ。


日本はペリー来航で鎖国を解いたが、そのわずか20年後、日清戦争に勝ち、37年後には日露戦争にも勝利した。
この驚異的な日本の発展力、軍事力はアメリカには脅威に映った。

第一次世界大戦時、日本は国連理事国であり、連合国側であり、ドイツと戦ったという事実はアメリカでは教えられていないという。(日本でも)

現在、アメリカ国内でも人種差別による犯罪事件が多発している。
白人至上主義だ。
アメリカ人にとって、白人以外の有色人種は自分たちが支配するものだという意識は今だに根強く残っているのは明らかだろう。

イギリスを代表とする、植民地政策時代、アメリカに移住した「開拓者」と呼ばれる人々は元はヨーロッパ人なのだから、自分たちが一番なんだという優越感はそのまま持ち込んだのだろう。
そうして、先住民であるインディアンを殺戮し、黒人奴隷をヨーロッパの奴隷商人から買って、土地を切り開いていった。
そしてキリスト教での宗教支配。
ヨーロッパ列強がやった支配システムと全く同じだ。

ヨーロッパの人々は、自分たちの歴史が世界の歴史だと思っているというのは前に書いたけど、アメリカ人にもそれが当てはまる。
自分の国より歴史がある国は認めたくないのだ。
日本はアメリカの何十倍もの歴史がある。
そして、武力行使をちらつかせ、開国させる手法は今と変わらない。
アメリカが期待したのは、キリスト教の浸透だったが、今もってそれは成功していない。
この部分でもアメリカ人にとっては許しがたいことなのだろう。
フイリピンでは成功したのになぜ、ということになる。

日米安保条約も、本音は「日本の再軍備」を恐れての措置だったという。
アメリカの領土(真珠湾攻撃)を武力攻撃した国は今だに日本以外ない。
そして東南アジアでの日本兵の勇敢な戦い方はアメリカに脅威を与えていた。
米軍基地は米国を守るためにあり、日本を守るためではない。
これらの基地なくしては米軍は地球の半分を防衛できない。

このような、選民思想とキリスト教原理主義による傲慢なアメリカの実態が、つぎつぎと記されてゆく。

つまり、アメリカ人にとって日本という国は、
誇り高いアメリカの領土を攻撃した世界で唯一の国であり、戦争をすると恐ろしい力を発揮し、技術力もあり、アメリカ人の勧めるキリスト教を拒否する、許しがたい国なのだ。

アメリカ海兵隊員の経験もあり、日本人の妻をもつ著者は、だからこそ、日本は主張すべきことは主張するべきだという。
米国に正義を主張すべき時が来ているという。
それは米国が不都合な真実を認めることであると。

日本のリーダーが本気で、毅然とした態度で、おかしいことはおかしいと言えばいいのだということ。



★追記
ヒラリー・クリントンが大統領になっていたら、アメリカ国内では暴動が起こっていただろうという。
学生は奨学金ローンに苦しみ、大学を出ても就職口がなく、盲腸の手術が何百万円で、医療費が払えなくて破産するより自殺を選ぶ人も出ているという。
中間層がほとんどいなくなったアメリカは爆発寸前だという。
殆どの国民は銃を持っていて民間人による軍事組織もあるという。
そういう彼らが立ち上がったら内戦になるという。

エネルギーではシェールガスの革命を言われているが、長くは続かないという。
石油の採掘は千メートルだけど、シェールガスの場合は一万メートルで効率が悪すぎ、捻出される量も少ないからだという。

そしてもう一つは水の枯渇が近いという。
地下水や川からの取水にもうすぐ問題が出て来るだろうという。
アメリカ国内では水の危機が以前から言われているが、アメリカ人はそんなことにはお構い無しで、家の庭の芝に毎日たっぷりの水をやることはやめられないだろうという。




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by 2006taicho | 2017-10-08 06:04 | 最近読んだ本 | Comments(0)

「破獄」 吉村昭

吉村昭の作品、二冊目。


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破獄 単行本 1983
吉村 昭 (著) 岩波書店
Amazon 中古1円






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吉村昭 1927年~2006年(満79歳没)

現場、証言、史料を周到に取材し、緻密に構成した多彩な記録文学、歴史文学の長編作品を次々に発表。

★内容紹介
昭和11年青森刑務所脱獄。昭和17年秋田刑務所脱獄。昭和19年網走刑務所脱獄。昭和22年札幌刑務所脱獄。
犯罪史上未曽有の四度の脱獄を実行した無期刑囚佐久間清太郎
その緻密な計画と大胆な行動力、超人的ともいえる手口を、戦中・戦後の混乱した時代背景に重ねて入念に追跡し、獄房で厳重な監視を受ける彼と、彼を閉じこめた男たちの息詰る闘いを描破した力編。読売文学賞受賞作。


実際に存在した事件を小説化。
戦争と刑務所の実録ものともいえる。

戦争に突入した場合、刑務所にいる囚人達をどう扱うか、刑の軽いもの、重大犯罪者、終身刑の囚人のそれぞれの扱いをどうするか。
食事への不満と運動不足は囚人の大敵。
囚人は騒ぎ出し、最悪の場合は刑務所内で暴動も起きるし、そうなったら看守たちの数ではとてもかなわない。
仮に脱獄したら近隣住民にどんな危害を加えるかわからない。
そうなると近隣住民からの不平不満も刑務所に集中する。

戦争中の囚人たちは一般国民よりはるかに恵まれた食事を保障されていたなんてまったく知らなかった。

囚人を使って軍の飛行場を作らせたり、鉄道や道路など囚人たちが軍の役に立っていたことも知らなかった。
それと戦争になると治安が悪化し、犯罪者は増えるし、一方で看守たちは兵隊にとられるし、ということで警備体制が手薄になっていたことも。

そしてそれは終戦を迎えても、一層激化したという。
刑務所で働く所長をはじめ刑務官は、ただ囚人に厳しく接しているだけではまったく駄目だということが克明に記されている。

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これはほんの一例、小説の主人公の場合、これとは別に特注の独居房が作られた。
房の扉は金属製。
格子は断面が『<』のような形状になっており、室内から廊下を見ることも廊下から中をみることもできなくなっている。
ではなぜ壁ではなく格子なのかといえば、換気と暖房のため。



そういう時代背景の中、4度の脱獄(破獄)を成功させる主人公。
両手両足に施錠をされていても堅牢な独房から逃げ出す。

その手段手法、監視する側の注意をそらす頭の良さ、忍耐強さ。
冬は零下20度にもなる網走刑務所には暖房はない。
それは看守も同じで、長い廊下の中央にストーブが一台あるだけ。
独居房の囚人は、起きている間は正座が義務で、寝る時は顔を布団の中から出して眠らなければならない・・・しかし・・・・。


こういう本当にあったことを1円で読めることに感謝。






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by 2006taicho | 2017-09-25 16:45 | 最近読んだ本 | Comments(0)

滝山コミューン

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滝山コミューン1974 (講談社文庫) 2010
原 武史 (著)
Amazon 中古91円

原 武史(はら たけし、1962年- )
日本の政治学者、放送大学教授、明治学院大学名誉教授。専攻は、日本政治思想史。近現代の天皇・皇室・神道の研究を専門とする。(by wiki)



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東京都東久留米市滝山に存在する、旧日本住宅公団(現都市再生機構)が整備した公団住宅である。


内容紹介
郊外の団地の小学校を舞台に、自由で民主的な教育を目指す試みがあった。しかし、ひとりの少年が抱いた違和感の正体は何なのか。「班競争」「代表児童委員会」「林間学校」、逃げ場のない息苦しさが少年を追いつめる。30年の時を経て矛盾と欺瞞の真実を問う渾身のドキュメンタリー。(講談社文庫)

著者の感じた違和感はたくさんあったが、一つだけ例を挙げると、
キャンプファイヤーでみんなで輪になり、唄を歌っているうちになんだか強い団結意識を感じ、みんな仲間なんだと思い込める不思議な高揚感、これは一体なんだろうということ。
それらは、教師たちが意図し、用意周到に準備された集団意識作りだったことをあとで知る。

当時の日教組は組合加盟が7割を超えていて(現在は約3割)、文科省の指導に批判的な教師が多かった。
日の丸掲揚や君が代斉唱に反対など。
教師の中には安保闘争世代、東大紛争など学生運動をやっていた者が多かったせいもある。

著者の育った滝山団地はその影響を受けて、教師も父兄も革新的だったのだろう。
学級の集団作りの見本となる理論が先にあり、それを忠実に実践した小学校がかつて存在し、消滅したという事実。
1970年代前半の団地ブームが背景で、著者はその時期を小学生として育つが、そのなかで一人違和感をもって過ごした。
その回想のドキュメンタリー。
思えば団地ブームがあり、マイホームブームがあり、マイカーブームあった時代。
団地の間取りはどこの家も似たりよったりで、「友達の家に行っても自分の家にいるようだった」と述懐している。
(著者の世代の10年後、1971年から1974年までに生まれた世代を団塊ジュニアという。)
当時の労働者の組合組織は強かった。
日教組も国鉄も、72時間ストで電車がストップした時代。
親は教育に熱心で、当時は欧米の影響で「個人」が重んじられた。
都会の暮らしは、
どこの家も子供は一人か二人で「核家族」と呼ばれ、個人を尊重し、そのかわり隣の家のことはよく知らない、というようなことが始まった時代かもしれない。
確かにこのころが日本の教育が変わり始めた時期だったと思う。
戦後は終わったんだ、新しい教育が始まったんだという時代だったかもしれない。
教師志望の人や、教育関係者には役立つ本だと思う。

余談ですが、
団地やマンションなどの集合住宅で育った人は、一戸建てに住みたいと思い、一戸建てで育った人はマンション住まいがいいという傾向があるらしい。







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by 2006taicho | 2017-09-14 11:26 | 最近読んだ本 | Comments(0)

観光立国の正体

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観光立国の正体(新潮新書)
藻谷 浩介 (著), 山田 桂一郎 (著) 
2016年 Kindle版 820円




藻谷氏は日本全国の地方都市をすべて見て回ったという実績でこの分野では著名人。「デフレの正体」という本で一躍話題に。わが町にも講演に来て、話を聞きに行ったことがある。
山田氏は先輩格で、観光のカリスマと呼ばれ、ヨーロッパのスイスを拠点に日本の観光についていろんなアプローチをしている。
紹介文では、
爆買い、インバウンド、東京オリンピック……。
訪日外国人の急増とデフレの慢性化で、国策としての「観光立国」への期待が急速に高まってきた。
しかし、日本のリゾート・観光地の現場には、いまだに「団体・格安・一泊二日」の旧来型モデルに安住している「地域のボスゾンビ」たちが跋扈している。
日本を真の「観光立国」たらしめるには何が必要なのか。
地域振興のエキスパートと観光のカリスマが徹底討論。


TVで外国人観光客の実態を見ると、賢い旅行をしているなあという印象をもつ。
たしかにJTBをはじめ、大手旅行代理店の役割は旧態依然としている感じがする。
そしてその旧態依然が、地元の有力者と密接に結びついていたりするのは、一般には知られていないだろう。
この本ではそういう人たちを「ボスゾンビ」と呼ぶ。

「一泊二日・食事付き」という旅行スタイル。
このスタイルの日本人への定着はものすごいと思う。
島で暮らしているとつくづく実感させられる。
一体この発想の貧しさはなんなんだろうと思う。
旅行というものへの発想が、老いも若きもこれほど貧弱なのはなぜなんだろう。

観光地の市町村、地元有力者、地元政治家の弊害は言うまでもない。
観光協会、商工会、なんとか協議会、町おこしなんとか会など、地元の発展を既得権益保護団体と化している例は腐るほどある。

観光協会の会長が自分の旅館を優先してお客を回しているのは、全国でやっている。
ある旅館が「ここにはなんにもありません」というパンフレットを作ったらお客が増えたとか、
あるレストランが「一万円ランチ」を売り出したら予約が殺到したという事例がある。
しかしこういう企画は町のボスたちからは決して出てこない。
発想が採算&利益しかないからだ。
どういう波及効果があるかまでは考えないからだ。
「一万円ランチ」を考案したシェフは
「今まで原価ばかり計算していて、自分の好きな食材を自由に選んで料理したことがなかったけど、これで料理人として目覚めた」
と言っている。

「一泊二食・食事付き」の発想は最近見直しの傾向にあるのも事実。
もう一つは、交通手段の発達で、日帰り旅行者の急増に歯止めをかけるための動きもある。

キーワードとして旅行というのは「非日常」体験ではなく、「異日常」体験だとこの本は述べている。
日本は特に、受け入れ側はリピーターの獲得に無頓着だという。

個人的には観光旅行というのと、旅行というのではちょっと違うと思うし、家族旅行、グループ旅行、旅というともっと違う気もする。
旅行形態によって、受け入れ側の対応がもっと違っていていいと思う。

観光というと一度訪れたらおしまいという発想があるから、リピーターの獲得は難しくなる。
この本でも言っているが、「自分だけの体験・経験」をしてもらうことが、リピーター獲得のキーワードだと思う。
「もう一度来る理由」「また行きたくなる理由」ということ。

山田氏の住む、スイスの例は非常に参考になる。
スイスではガイドの制度が発達していて、お客の様々な希望に対応するという。
ガイドにもレベルの差があり、職業として成り立っているという。
日本では団体旅行のときのガイドさんしか思い浮かばないから、その制度は日本でもいずれ取り入れられてゆくと思う。

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by 2006taicho | 2017-09-12 08:02 | 最近読んだ本 | Comments(0)

高熱隧道 吉村昭

d0098363_2321186.jpg高熱隧道 (新潮文庫) 1967年
吉村 昭 (著) Amazon中古190円

吉村 昭(よしむら あきら)
1927年 - 2006年 享年79歳




隧道(すいどう)とはトンネルのこと。
時代は昭和初期の富山県の黒部渓谷。
黒四ダム建設は、石原裕次郎の「黒部の太陽」が有名だがこれは違う。

この作品の舞台は黒三ダム建設に携わった現場監督たちの物語。
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国家プロジェクトの名の下、前人未到の黒部渓谷は、温泉湧出地帯で岩盤から漏れ出る蒸気は160度を超える。
通常ならあっという間に意識を失うその灼熱地獄の中で、現場監督はどうやったら掘り進められるか苦闘する。
岩盤を吹き飛ばす、発破用のダイナマイトも自然発火で暴発。
泡雪崩(ほうなだれ)という聞きなれない雪崩で頑丈な宿舎が500メートルも吹き飛ぶ。
犠牲者は300人を超える。
犠牲者の肉片を集めて一人の人間にする、そしてその肉片を針で縫い合わせ、遺族の哀しみを少しでも和らげようとする責任者の鬼気迫る行動。
現場監督と作業員(人夫)たちとの微妙な関係。
「死ぬのは俺たちだ、お前じゃない」という作業員たちの無言の圧力。
小説の形をとっているけどこれは凄まじいルポルタージュだ。
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☆泡雪崩(ほうなだれ)とは(by wiki)
多雪地で気温が低く、多量の降雪を伴う吹雪の時かその直後の積雪が安定しないときに起きやすい。そのため、主に厳冬期の山間部で発生する。

通常の雪崩のような雪塊の落下とは違い、雪崩を構成する雪煙が最大で200km/h以上の速度で流下する。その衝撃力は数百キロパスカル(建造物などを破壊するほどの力に相当する)に達し、大きな被害をもたらすと考えられている。

そのため、泡雪崩が発生すると、あまり雪が堆積しないにもかかわらず(通常の雪崩では多量の雪が堆積する)、衝撃によって周囲のものがことごとく破壊されているか吹き飛ばされているという状況が発生する。

この破壊力に関して、爆風が発生すると誤解されることが多いが、実際は、雪煙が空気と雪粒の混合体であるがゆえ生じる衝撃圧による。この誤解は『高熱隧道』の記述によって広まったとされている。





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by 2006taicho | 2017-09-08 03:11 | 最近読んだ本 | Comments(2)

蝉しぐれ

d0098363_159196.jpg蝉しぐれ (文春文庫) 1988 藤沢 周平
Amazon中古 1円

藤沢 周平(ふじさわ しゅうへい)
1927年~1997年 山形県鶴岡市出身。本名、小菅 留治(こすげ とめじ)。享年69歳。



サムライの登場する時代小説は滅多に読まないけど。友人のすすめで読んでみました。
実に良かったです。
マイナー志向の自分としてはあまりに有名な作家なので敬遠していました。
食わず嫌いというやつです。

藩主の部下である武士たちが普段はどんな仕事をしていたか、具体的には知らなかったがこの本で学んだ。
主人公は領地である田畑を周り、稲の成長を調査し、山林をめぐり、地形を学び、川の氾濫などの恐れを調査する。
田畑の作物の成長に精通する。
各土地の状態を記録し、農民に会い実際に聞き取りをし、今年の年貢米の状態を報告する。
決して威張らず、農民と対等に話をし、どことどこが親戚関係だとか、どこの誰が嫁に行ったとか、村ごとの内情にも精通する。
文武両道は当たり前で、主人公は孔子を読み、剣術の修行に励み、剣の使い手となる。
なによりいいなと思ったのは、自分の住む町に精通するように育てられる。
それが必ず役に立つ。


なんだか今の日本人が忘れてしまったものが溢れていました。
アベさんに言いたいですね
「おぬし それで義が立つか」






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by 2006taicho | 2017-09-06 08:53 | 最近読んだ本 | Comments(2)

『汽車ポッポ判事の鉄道と戦争』

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『汽車ポッポ判事の鉄道と戦争』

単行本(ソフトカバー) – 2015/5/22

ゆたか はじめ (著)

amazon 1,944円(定価)



筆者は本名=石田譲一で元裁判官。1928年生まれ。
子供の頃から電車好きで、戦前の都電、市電、蒸気機関車などを乗り歩く。
結局、日本の鉄道のすべてを乗り歩くという偉業を達成。
驚くのは鉱山などのトロッコ電車にも特別に乗せてもらったという。

戦前、戦中時代のエピソードが面白い。
東京から長崎への鉄道がどれだけ時間がかかり、庶民はどういう暮らしぶりだったかなど。
ローカル線に乗っていれば、その町の方言、会話の中身、生活の臭いなどがわかり、裁判官としても大いに役立ったという。

退職後は沖縄に移住、沖縄に路面電車を走らせようと提唱している。


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都市の朝晩の渋滞の解決策として路面電車は有効なのかもしれない。

行政はバスに期待したが結局は渋滞の影響を受ける。
排気ガスを出すことに変わりはない。

路面電車は驚くほど安価で導入でき、スピードも早い。
ヨロッパの都市では、都心に車を乗り入れることを禁止している都市が多い。

路面電車は電車とバスの良さを併せ持つ乗り物だ。
バスは停留所と停留所の間隔が短い、電車は時間に正確で運ぶ乗客数はバスより多い。
鉄道のように大きなホームを造る必要がない。
階段がないからお年寄りには負担が少ない。


レールの上を走らないバスは都心ではなく、各地域の足代わりを果たせばいいという。
なるほど、そうすれば渋滞で立ち往生とかないし、時間に正確になるし利用者も増えるかも。

この本を読みながら、渋滞の多い都市の交通手段としては
地域の中心は路面電車、その周辺をバス、各地域への足は鉄道&高速鉄道(急行・特急・新幹線)という住み分けにすればいいのかも知れない。
路面電車をちんちん電車と思わないほうがいい、結構スピードが出るからだ。

スピードと効率を追い求めて、結局、非効率で環境汚染の都市交通になっているという気もする。
日本の鉄道をどうするか、尺度が経済的評価しかないから、不採算という理由で地方のローカル線はどんどん廃線になり、住民の不便さも顧みない。
一方で、黒字路線は必要以上にどんどん近代化しスピードと時間の正確性を競う。
この政策は過疎化を促進していることにしかならない。
交通不便な町にしておいて、地方創生なんか出来っこない。
不採算でも廃線にしない理由を見つける努力をしない。
そもそも採算しか尺度を持ち合わせていないからだ。
だから、せちがらくなる、冷たい社会になる、非人間的な社会になる。
「車窓からの景色」「駅の弁当」「各地の方言まじりの会話」「町の臭い」「旅の旅情」なんて笑われてしまう。
これからの子どもたちはどういう旅人になるのだろう。
永六輔は「町の知らない角をまがること、それはもう旅なんです」
と言っていた。

路面電車の活用は、急がば回れという感じ。
鉄道は平和でなければ走れない、本当にそう想います。
鉄道=電車が走っているということは、人々を安心させているんだなあと改めて想いました。


注記

路面電車(ろめんでんしゃ)は、主に道路上に敷設された軌道(併用軌道)を用いる「路面鉄道」(英: Tram、Tramway、Streetcar、独: Straßenbahn)を走行する電車である。
類似のシステムにライトレール、トラムトレイン、ゴムタイヤトラムなども存在する。

トラム=路面電車のこと。
LRT(ライトレール)路面電車と鉄道の中間の都市型電車。路面区間は約40キロ、専用軌道上では時速70キロで走る。





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by 2006taicho | 2017-08-09 20:47 | 最近読んだ本 | Comments(0)

『北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか』

北欧は福祉が充実しているというけど、税金が高すぎるという認識があると想います。
そこまでは知っていてもなかなか実際のことは知りませんでした。
そこで、ちょっとだけ本で調べてみました。
モデルはスウエーデンです。


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『北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか』

翁 百合 (著), 西沢 和彦 (著), 山田 久 (著), 湯元 健治 (著)

日本経済新聞出版社 2012-11-16

amazon 中古982円




d0098363_100623.jpgスウェーデンの国民負担は確かに高いです。一方で法人税は日本より安くなっています。これは、スウェーデンが外資の受け入れに積極的であるということです。


d0098363_1002280.jpg国や自治体は積極的に税金を投入しています。
社会保障給付率=医療費は歯科も含めて18歳までは無料だ。
公的教育支出率では教育費も大学まで無料。給食費もいらない。
積極的労働市場政策比率=失業した場合、職業訓練制度が充実している。
家族関係支出率=児童手当、育児休業手当、扶養手当、生活保護手当他。


d0098363_109475.jpg男性の取得率の高さに驚きます。
女性もしっかり働いています。
しかも経済成長も成し遂げています。


大きな特徴
1 税制が地方分権型になっているので、日本のように一度中央に集めてから地方に分配する方式ではないので、地方の財政管理力が高い。同時に、町に直接支払っているので住民の行政への関心も高い。

2 社会保障の制度が、高齢者だけでなく若者世代にも税金を投入しているので、住民の納得感が強い。

3 政府に対する信頼が非常に高い。
選挙の投票率は80%。国民は国家に貯金をする感覚で税金を納める。
これは1930年すぎから、様々な思考作誤を繰り返し、その歴史過程で政府に対して信頼が醸成されてきたもの。
「どうせ投票しても変わらない」と考える国民が少ないということ。

スウェーデン人口は960万人、日本は1億3,000万人。
国土は450,295km2で日本(377,972.28km2)の約2倍。
GDPは世界23位(大阪府程度)日本は世界三位。
一人あたりGDPはスウェーデン12位、日本は22位。

人口・経済規模・文化・伝統・生活習慣・国民性などスウェーデンと日本は大きく違う。
国の規模が違えば国家の運営も違ってくる。

若者の失業対策に社会保障費を投入し、失業保険を充実させたり、職業訓練などをどんどん受けさせたり、仕事を斡旋したりと、日本でいう社会保障費イコール高齢者対策費で、現役世代には恩恵がないという認識があるのでここは大きく違う。
そういう税金の使い方をしているから、現役世代も納得しているのだ。


政府と地方とがうまく分権していて、しかも財政の透明性が高いから、国民はいつでもネット確認できる制度になっている。
税制も地方によって特色を活かした税制になっていて、決して画一的ではない。
つまり、その地方の産業、経済規模などをきちんと考慮して税制を構築している。
わかりやすくいえば、北海道と沖縄県では違うだろうということ。

高負担だから不満もあるようだが、その声は大勢ではない。
納税ということが自分の老後のために確実になっているという実感が日本とは違う。
つまり、老後の備えのため、こつこつ貯蓄に回そうと一生懸命になっている感じがない。
そのくらい社会保障が手厚いということなのだろう。


もう一つは、法人税優遇で外資をどんどん呼び込むこと。
大手大資本の誘致で税収は伸び、新たな雇用と新たな技術開発が生まれるという循環方式を目玉政策としている。
結果、それが社会の活性化につながっている。
新たな技術開発は新たな職業の創出にもなる。

スウェーデン方式をすぐ実行すべきだとは思わないし、日本は日本なりのやり方を探すべきだと思う。
参考になる部分を参考にして、国としてのあり方を目指せばと思う。
スウェーデンの政策立案、実証は平均5年計画だとうことが素晴らしと思う。
日本は単年度で予算を組むが、あまりにも杜撰。
毎年こうだから、まるで恒例予算の計上。
それが社会にどう効果があったのか、誰も検証しない。

家計簿のやりくりばかりに目が行って、つじつまを合わせるのに大変というのが日本の印象。
収入と支出、夫婦のこれからの収入は、将来は家を買うのか、家の補修は、病気への備えは、どんな大人になって欲しいのか、そのための教育は、教育資金や結婚資金はいつ必要か、それならいつから貯蓄をしたらいいのか、長期な考えが不足している気がする。

投票率80%が多くのことを示唆している気がする。
日本はまず、これをなんとかしなければと思う。

スウェーデンでは自分の住む町の行政サービス、政策に対して問い合わせたり、注文をつけたりすることが定着している。
税金を地方の自治体が管理運営しているから、お役所が身近な感覚なのだろう。
住民票と印鑑証明くらいしか用がないと思っている日本人とは雲泥の差。


日本の政治家の劣化はほんとうにひどいものだから、それに関心を抱いてこなかったツケを今払わされているのだと思う。
無関心で国がよくなるわけない、黙っていてはダメだということですね。

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by 2006taicho | 2017-08-09 11:40 | 最近読んだ本 | Comments(0)

殺人犯はそこにいる

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『殺人犯はそこにいる』
隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件


清水 潔・著 
新潮社 2013年出版
(単行本amazon中古234円)

キーワード=なぜ再捜査しないのか なぜ国民の多くはこのことを知らないのか

d0098363_0351248.jpg足利事件(あしかがじけん)とは、1990年5月に発生した殺人事件。
その後、誤認逮捕により冤罪被害事件となった。
また真犯人が検挙されていない未解決事件でもある。
当事件を含めて、足利市内を流れる渡良瀬川周辺で遺体が発見された3事件は足利連続幼女誘拐殺人事件とされている。
by wiki



2009年6月に釈放されたときの様子はニュースで連日報道されたので、覚えている人もいるでしょう。
この事件の核心はDNA鑑定です。
この足利事件は日本で初めてDNA型鑑定が行われた事件です。
今から27年前、当時のDNA型鑑定はまだ不正確だったのです。
菅谷さんはひたすら再鑑定を望み、ついにそれが叶います。
幼女にブラウスに付着したものと菅谷さんのDNAは一致しなかったのです。
そのことが具体的に描かれています。
我々国民は「DNAが一致した=じゃあ犯人に違いない」そう思っています。
後に検察当局と裁判所は、重要な科学的証拠ではあるが、犯人と特定する決定的証拠とはならない、と述べています。
我々の印象は、TVドラマなんかの悪影響ですね。

d0098363_0372375.jpg菅谷さんは釈放されました。
ということは犯人は素知らぬふりをして、どこかで今も生活しているということになります。
筆者が訴えたいのはそこです。
国会でも質疑があり、警察のトップ国家公安委員長も、内閣総理大臣も捜査すべしと明言しましたが、未だに捜査が始まったという気配がありません。

渡良瀬川の周辺10キロ圏内で5人の幼女が殺された事件なのに。
著者の推測は明らかです。その真相が書かれています。

そしてもっと驚くのは、著者は、新たに発見された真犯人のDNAと完全一致する人物を割り出します。
しかもその人物に直接取材もしています。
それを警察に報告もします。
きちんと取り調べてくれと。

d0098363_046289.jpg
しかし、警察は独自のDNA鑑定を行い、一致しないという理由で捜査を開始しないのです。
国会で総理大臣が捜査すると明言しているのにです。
総理大臣の意見など本当は要らないはずです。
だって犯人と思われた人は冤罪だったと、検察も裁判所も謝罪しているのです。
人に言われてやることではない、警察の威信をかけてでも再捜査するのが当たり前のことです。


なぜ再捜査しないのか、それが書かれています。
本のタイトル通り「殺人犯はそこにいる」のです。
小説家&評論家の佐野洋は
「この本はピュリッツァー賞の最高の部門・公益部門に相当する」と書いています。

菅谷さんの釈放のことは当時大きく報道されました。
しかし、幼女連続殺人事件のその後の捜査はどうなっているか、大手メデイアは報道しません。
だから国民の多くはこの大事件をまったく知らないのです。
船越&松井の芸能人夫婦の離婚の話題は連日報道するのに。
その話題もそろそろ視聴者が辟易しはじめているとTV局は感じているはずです。
さて次は月曜からの国会だな・・・という具合です。


実際にあった事件、ノンフィクションです。
この本は「単なる足利事件の本」ではありません。
読み始めたら止まりませんでした。
おすすめの本ではなく、読んでおくべき本だとあえて言いたいです。






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by 2006taicho | 2017-07-23 00:53 | 最近読んだ本 | Comments(0)

おかしいことはおかしいと言う