アスリートたちの抗議

イミシンというサイトからの全文引用です。



48年前のオリンピック、ある男性の勇気ある行為が彼の人生をめちゃくちゃにした。

この時代を通過してきた人もそうでない人も、この写真が何を示しているかわかるはずです。 これは1968年、4月にマーティン・ルーサー・キング・Jr.牧師、その2か月後の6月にロバート・ケネディが暗殺された年に撮られた写真です。ベトナム戦争に対する反戦運動が高まる中、多くの都市で学生運動や反戦運動が起こると同時に、アメリカ国内のいたるところで人種差別が引き金となった暴動や警察との衝突で多くの人が命を落としました。アメリカ、そして世界が揺れに揺れた年です。

その真っただ中に行われたのが、1968年のメキシコシティオリンピックでした。

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世界が大きな変動の中にあったその年のサマーオリンピックで、1968年10月17日夕刻、メダル授与のために表彰台に上がった二人のアメリカ人が史上に残るある行為を行いました。

男子200メートル競争を世界記録で優勝したトミー・スミスと3位に輝いたジョン・カーロスが、アメリカ合衆国国歌が流れて星条旗が掲揚される間、壇上で首を垂れ、黒い手袋をはめた拳を空へと突き上げたのです。

二人が見せたこのブラックパワー・サリュート(アメリカ公民権運動で黒人が拳を高く掲げ黒人差別に抗議する示威行為)は、近代オリンピックの歴史において最も有名な政治行為として知られています。二人は黒人の貧困を象徴するため、シューズを履かず黒いソックスを履き、スミスは黒人のプライドを象徴する黒いスカーフを首に巻き、カーロスは白人至上主義団体によるリンチを受けた人々を祈念するロザリオを身につけていました。

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しかし、この三人目の選手が誰かを知る人は少ないのではないでしょうか。一見、写真の中の彼は、静かにスミスとカーロスの両選手の隣に立ち、歴史的瞬間を目撃しているだけのように見えます。

彼の名前は、ピーター・ノーマン。オーストラリア史上最速の短距離陸上競技選手で、この写真が撮られたときは世界で2番目に足の速い選手でした。スミスとカーロスは示威行為を行なったことでその後長い間アメリカスポーツ界から事実上追放されることになります。また、メディアからの非難・中傷にさらされた彼らのもとには、殺害を予告する脅迫文が何通も届けられたといいます。しかし多くの人に知られることがなかったのは、ピーター・ノーマンがスミスとカーロスの両選手の意図に共鳴して二人の隣に立っていたということです。そして彼もまた、その報いを受けていたのです。

当時のオーストラリアには、アメリカと類似した白人最優先主義とそれに基づく非白人への排除政策が存在していました。実際、南アフリカのアパルトヘイトはオーストラリアの先住民に対する差別政策を見習って作られたものだと言われています。1905年から1969年にかけて、「先住民族の保護」や「文明化」という名目で約10万人の先住民族であるアボリジニの子どもを強制的に親元から引き離し、白人家庭や寄宿舎で養育するという政策も行われていました。そのため、この時代に白人オーストラリア人のノーマンが黒人やその他の少数民族と接触を持つ公民権運動に同調するというのは、本国では彼の人生を破壊しかねなない、非常に危険な行為だったのです。

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決勝レース終了直後、銀メダルを獲得したノーマンはスミスとカーロスに「人権を信じるか」と尋ねられたそうです。ノーマンが「信じている」と答えると、スミスとカーロスは彼に「神を信じるか」と尋ねました。その質問にもノーマンは「強く信じている」と答えました。そして、その次にノーマンが口にしたことを二人はいつまでも忘れることはないといいます。

「僕も君たちと一緒に立つ」

そう言ったノーマンの目には少しも恐れはなく、ただ愛に満ちていた、とカーロスは追想しています。

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スミスとカーロスは、「人権を求めるオリンピック・プロジェクト(略称:OPHR)」のバッジを身につけていました。このバッジはオリンピック選手たちによる平等な権利を求める無言の訴えを示すシンボルでした。表彰台に向かった際にスミスとカーロスが「ブラック・パワー・サルートをするつもりだ」とノーマンに打ち明けると、ノーマンは二人の胸に留められたバッジを指差してこう言ったそうです。

「君たちが信じていることを僕も信じている。それ、僕の分もあるかい?そうすれば僕も人権運動を支持していることを証明できる」

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スミスはそのとき、驚いてこう言ったのを覚えています。「何なんだ、この白人のオーストラリア人は?銀メダルを取ったんだから、それで十分大きなことは成し遂げているじゃないか!」

スミスは余分なバッジを持っていなかったため、ノーマンは他のアメリカ人選手から借りたバッジを胸に付けました。そして、史上に残る瞬間が実現したのです。



三人の若いアスリートが表彰台に上がり、スミスとカーロスは拳を高く上げ公民権運動への敬礼をしました。何百万人もの人々を前にした「非政治的なオリンピック」の場で、これほど勇気ある政治行為をした人は前にも後にもいないといわれています。三人は、すべての人間は平等であるという信念のために行なったこの行為が永遠に残るだろうということを理解していたのです。事件後、アメリカのオリンピックチームの代表は記者会見で、この選手三人が生涯にわたって大きな代償を支払うことになるだろうと発言しました。

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時代は流れ、アメリカの人種差別が撤廃された後、スミスとカーロスは人権のために戦った英雄になりました。歴史はスミスとカーロスの行為に正当な評価を下し、サン・ホセ州立大学には二人の行為を祝して像が建てられます。しかし、2位の表彰台が空です。

ノーマン不在の像は、あの日以降オーストラリアでノーマンが辿った運命を象徴するかのようです。それは最も悲しいヒーローの物語と言ってもいいでしょう。

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オーストラリアでは、ノーマンは歴史から抹消されたかのような扱いを受けました。1972年のミュンヘン・オリンピックに選抜で出場資格を得たにもかかわらず、オリンピックのオーストラリア代表から除外され、ノーマンはスポーツ界を引退。その後は体育の教師や肉屋などの職を転々としていたそうです。

白人中心のオーストラリア社会でノーマンは、あの事件がきっかけで、家族ともども疎外されてしまったのです。その後、怪我により壊疽も患い、除け者にされ、無視された存在となった元アスリートは、アルコール中毒とうつ病に苦しみました。ジョン・カーロスはノーマンのことをこう言います。

「ピーターはたった一人で、国全体に立ち向かって戦っていたんだ」

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ノーマンは当時、信じられない名誉挽回のチャンスを与えられたことがあります。スミスとカーロスの行為を人類に対する冒涜だと公に非難すれば、ノーマンの行為も許されるというものでした。しかし、自分は間違っていないことを知っていた彼はその申し出を退けました。

2006年、ノーマンは心臓発作で亡くなりました。受けるべき謝罪は何一つとして受けないまま、この世を去ってしまったのです。彼の葬儀ではトミー・スミスとジョン・カーロスが棺を担ぎました。

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2012年、ノーマンはオーストラリア政府から正式な死後謝罪を受けました。政府はピーター・ノーマンに対し、「・・・何度も予選を勝っていたにもかかわらず、1972年のミュンヘンオリンピックに代表として送らなかったオーストラリアの過ちと、ピーター・ノーマンの人種間の平等を推し進めた力強い役割への認識に時間がかかったこと」を謝罪しています。

「彼は自身の選択に対して報いを受けた」トミー・スミスは説明します。「あれは、私たちを同調するという単純な行為ではなく、彼自身の戦いでもあった。彼は白人で、有色人種男性二人に並んで勝利の瞬間に立ち会った白人オーストラリア男性で、私たちと同じ志のもとにあそこに立っていた」

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ノーマンは1968年のあの日、200m陸上で20.06秒の記録で2位に輝きました。この記録は未だにオーストラリア記録として破られていません。本来なら英雄になるはずが、人権のために立ち上がったため批判され、生前は遂に認められずに2000年オリンピックにも招待されなかったのです。

世界にはもっと多くのピーター・ノーマンが必要かもしれません。あれから約50年、私たちはいまだに平等と人権のために戦っています。ノーマンの物語は、白人だろうが黒人だろうが人種に関係なく、平等を実現するのは私たちみんなの戦いなのだと教えてくれます。

この物語をシェアして、ノーマンの行為への敬意と彼の愛と思いやりのメッセージを広めてください。たった少数の人間でも大きく世の中を揺るがすことができることがあるのです。





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# by 2006taicho | 2017-08-19 23:51 | 知っておきたいこと | Comments(4)

大手メデイアがスルーして伝えていなかった加計学園獣医学部の設計内容。
ようやく明日辺りから騒がしくなりそう。
建築費は192億円。
坪単価が150万円になっているが、実際の図面内容をみるとその半分の約70万から80万円程度で出来てしまうという内容。じゃあその差額の約90億円は?というのが疑惑の核心。
ようやく公開された。⇓
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安倍政権さらに窮地 
加計学園の獣医学部新設「設計関連文書」全文を入手
8/18AERA

加計学園の岡山理科大学獣医学部の新設をめぐる問題で、本誌は計52ページに及ぶ設計関連文書を入手した。
(写真クリックで詳細)


上記AERAの記事にアクセスが殺到しているという。
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NHKはクローズアップ現代で、加計学園問題を22日に放送予定だったが、なぜかこんな予定変更をした。8/7から休止で8/27から放送となっているが内容は未定、とのこと。
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クローズアップ現代のHPを見る

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ミサイルは本当に撃ち落とせるのか?
民進党を離党した細野氏のtwitterが哀しい。
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細野氏は日本が撃ち落とせると思っているらしい。
米本土に向かうミサイルを日本が打ち落とすという錯誤
8/17日刊ゲンダイ
グアムに向かうというのであれば、日本の中国・四国地方の上空を通るし、またハワイに向かうというのであれば東北地方の上空を通る。
しかし今の日本の感知システムでは、発射から数分後に通過したことを後になって分かるのが精いっぱいで、せいぜいが誤って部品の一部が落ちてきた場合にそれを空中粉砕できるかどうかである。

詳細





民主党代表選
前原氏は元日本会議メンバーで以前から改憲派 


d0098363_2213100.jpg民進党・新代表に「枝野」はあっても「前原」はあり得ない理由
MAG2NEWS 7/31
彼は前々から「9条加憲論」を掲げていて、いま民進党がわざわざ前原を代表にするということは、安倍晋三首相の「9条加憲論」に呼応し同調することをこちらから申し出るのと同じことになるからである。

前原は、昨年の代表選の際にもそれを声高に主張し、また今年5月3日に安倍首相が唐突に9条加憲論を持ち出した後でも、例えば『週刊東洋経済』17年5月13日号のインタビューで「私は改憲ではなく『加憲』を主張してきた。9条第3項、あるいは10条といった形で、自衛隊の存在を明記してはどうかと考えている」と述べている。
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# by 2006taicho | 2017-08-19 02:28 | 知っておきたいこと | Comments(0)

勝手におすすめ本

本屋の手先になったつもりで紹介します。
これらの本はすべて「読みやすくわかりやすい本」ばかりです。
難解なものはありませんので、是非読んでみてください。
(Amazonで調べたら4冊で約2,000円でした)


一つ目は本の紹介ではなく、前フリとしてTBS雨宮塔子氏のインタビューから
ブログにコメントをくれるcocomeritaさんのブログより。

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オリバーストーン監督の日本への警告
20170118NEWS23

(画像クリックでインタビューが見れます)









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オリバー・ストーンの言っている内容がこの本です。
このブログではなんども紹介しましたね。
ノンフィクションなので、作者とスノーデン氏が最初に会う場面では本当にドキドキします。

とにかく日本と世界がどんな監視状態に置かれているのか、知っておいたほうがいいと想います。



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今月つまり8月17日発売ですでにベストセラーになっています。
読むと「うそだあ」「そんなバカな」という気持ちになりますが、筆者は公文書、実在の機密文書などの存在を取り上げて立証します。
日頃感じるなんかおかしい、という感覚を解き明かします。
内閣が誰であれ、政党がどこであれ関係ないことを実証します。
アメリカという存在の疑問に答えます。




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このひどすぎる格差。
一体どんな経済システム、どんな国がいいんだ、というヒントになります。



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作者はドイツに住んで何十年、夫はドイツ人。
なぜ欧米人は家の中でも靴を履いているのか?
なぜ日本人は外人に話しかけられると全身全霊で答えようとするのか。
欧米人への劣等感みたいな理由がわかります。
同時に日本の鎖国のよい影響も。
欧米の歴史がなぜ殺戮と征服の歴史なのか。
支配するためのキリスト教。
江戸時代の日本人の知的レベルの高さ、日本人の知恵、日本人の素晴らしが実感できます。
誇りに思えることがたくさんあります。





一体全体どうなってるんだ 実態は なぜそんなことに どうしたら でも日本人は・・・



勿論勝手な意見ですので、異論のあるかたは無視してください。





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# by 2006taicho | 2017-08-18 19:41 | 知っておきたいこと | Comments(2)


今治の市有地はまだ加計学園に移転されていなかった 〜 アベ友は借金の担保設定できず


2017年8月15日田中龍作ジャーナル ー全文ー

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件の土地(今治市いこいの丘)は今年1月29日、今治市土地開発公社から今治市に移転登記された。以後、動いていない。=8月14日付け、登記簿より=


今治市が加計学園に無償譲渡したはずの37億円相当の市有地は、いまだに加計学園の所有として登記されていないことが、田中龍作ジャーナルの取材で分かった。

丘陵地帯に広がる16・8haの市有地は、3月3日開かれた定例市議会で加計学園への無償譲渡が正式に決まった。
今治市役所はこの後、すみやかに移転登記するとしていた。

加計学園の誘致を主管する今治市企画課によると「市議会の議決をもって所有権は加計学園に移転する」ということだった。
不動産専門家によると慣行上、今治市の見解は正しいそうだ。

ところが件の土地の所有者は「今治市」のままだ(8月14日午後1時現在)。
田中はこの日、法務局に足を運び登記簿をあげてみたのである。
加計学園への無償譲渡を決めた市議会の議決から5ヵ月余を経ているのにもかかわらず、だ。

法務局のベテラン職員によると、公的機関が物件を動かした場合は、(不動産登記法・第16条により)公的機関の嘱託がなければ、登記できない。

今回のケースで言えば、加計学園側が「議会で議決されたのでウチの土地です」と言って、勝手に登記することはできないのだ。

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今治市議会は3月定例会の冒頭、市有地の無償譲渡を決めた。=3月3日、撮影:筆者=


今治市がまだ移転登記していない理由に事の核心がある。
今治市企画課は「大学設置審の認可が下りてから」というのだ。

無償譲渡した土地は加計学園が担保設定できる。
これは市議会で承認されている。

アベ友・加計学園はタダでもらい受けた土地を担保に借金ができるのだ。
今治市民が血税であがなった土地である。
ただし土地が登記されていればの話だ。

もし大学設置審の認可が下りなかった場合、加計学園は更地にして今治市に返却しなければならない。
愛媛県と今治市による校舎建設費(192億円)の半額(96億円)補助もなくなる。

キャンパスの建設は急ピッチで進んでおり、校舎の外観はほぼ整いつつあるほどだ。
これを更地にして返すとなると加計学園は間違いなく倒産する。

安倍政権が続けば、10月にも予定されている大学設置審の答申が「不認可」となることは考えにくい。

だがもし「不認可」となりそうな場合、安倍首相は衆院解散を打つ ― との見方が永田町にある。
選挙に勝ち、有無を言わさず、文科省に認可させるのだ。
「加計解散」である。






<地方大学>活性化に交付金、政府方針 東京集中解消狙い

8/16(水) 毎日新聞 ー全文ー

政府は、地方の大学の活性化を図る新たな交付金を創設する方針を固めた。
自治体が地元の大学や経済界と連携して展開する地域振興の取り組みを支援する形で、2019年度から百数十億円規模の交付金の支給を目指す。
地方大学の教育・研究環境の底上げを図るとともに、東京に集中する私立大学などの地方移転も促し、大学生の「東京一極集中」を解消する狙いだ。

東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県の大学と、地方大学の単位互換制度やサテライトキャンパスの設置を促す総額10億円規模の補助金創設も別途検討する。

交付金と補助金は、内閣官房の「まち・ひと・しごと創生本部」事務局が支給する。
今年度に制度検討を始め、来年度の募集開始を目指す。
自治体の首長や地元の大学などで作る協議会で産学官が連携した事業計画の策定などを促し、有識者が評価して交付金支給を決める仕組みにする。

支給対象の想定は、地域の企業による学生のインターンシップや現場実習の受け入れ▽地元企業から大学への講師派遣▽大学と企業の共同研究など。
地方の大学を卒業した学生がその地方で就職しやすい環境づくりを進める。
自治体と大学によるまちづくりなども評価対象とする。
文部科学省による既存の大学支援策と区別するため、地域を担う人材の地元定着など「人の流れ」を変える取り組みが対象となる見通しだ。

首都圏の大学定員は増加傾向で、都内の大学の定員総数は、大学に進学する都内の高校卒業者の約2倍に上る。
政府は東京23区にある大学の定員数を据え置く方針だ。
これに加えて新たな交付金や補助金を創設することで、既存の地方大学の底上げと東京の大学の地方転出を促す。




「地方の大学の活性化を図る新たな交付金を創設する方針を固めた。」

二つ目の毎日新聞の記事をどうみればいいのだろう。
私にはこの制度は「加計学園救済制度」にしか見えない。
アベさんはここまでやるか。
前川氏の意見が聞きたいところだ。





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# by 2006taicho | 2017-08-17 03:31 | 知っておきたいこと | Comments(0)

ビデオニュース・ドットコム2017年08月15日
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橘木 俊詔(たちばなき としあき、1943年8月8日 - )
日本の経済学者、京都女子大学客員教授、京都大学名誉教授、元同志社大学経済学部特別客員教授。
専攻は労働経済学。


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宮台 真司(みやだい しんじ、1959年3月3日 - )
日本の社会学者、映画批評家。学位は社会学博士(東京大学・1990年)。
首都大学東京教授。宮城県仙台市出身。


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神保 哲生(じんぼう てつお、1961年11月10日 - )
日本のビデオジャーナリスト。日本ビデオニュース株式会社代表取締役。インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』代表。
早稲田大学大学院客員教授。東京都出身。
国際基督教大学(ICU)教養学部社会科学科卒業、コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクール修士課程修了。



「日本人は格差を望んでいる」は本当か


ー全文ー
「日本のピケティ」との異名を取る京大名誉教授の橘木俊詔氏は、1998年に「日本の経済格差」を著し、一億総中流と言われていた日本経済が急速にアメリカ型の格差社会に向かっていることに対して、最初に警鐘を鳴らした経済学者の一人だった。
しかし、その後、日本は橘木氏の予想した通り、一気に格差社会への道を突き進んでいった。

 今回は橘木氏との議論を通じ、現在の日本の「格差社会」や「貧困化」の状態が、日本人がそのような社会となることを自覚的に選択した結果だったのかどうかを考えてみた。
つまり、われわれ日本人があえて格差が広がり貧困が放置されるような社会を望み、その前提となる税制や社会制度を選んだのか。
それとも、無自覚のうちにそのような選択をしていただけであり、それはこれから修正される余地があるものなのかどうか、だ。

 それにしても今や日本は、アメリカと並ぶ世界有数の格差大国となっている。
6人に一人が貧困線以下の生活を強いられ、貧困者の割合を示す相対的貧困率でも、富の偏在を示すジニ係数でも、日本はアメリカと並び世界で最も貧富の差が大きく、貧困層が放置されている国であることが、データによって裏付けられている。

それもそのはずで、再分配の前提となる国民負担率(租税負担率+社会保障負担率)でも、日本はアメリカと並び先進国では最低水準にある。
何らかの形で富める人たちから税や社会保障費の形で富を集め、それを貧しい人たちに分配しなければ、貧富の差が広がり、貧困が放置されるのは当然の帰結だった。

 17世紀以降、ヨーロッパの開拓者たちによって国の礎が作られたアメリカが、伝統的に個人に対する政府の介入を嫌い、自助の精神を重んじる国であることは、広く知られている。
そのアメリカができる限り税負担を軽くし、社会保障も公的負担を避け、自助に任せようとする傾向があることは、ある程度説明がつく。

無論、そのシステムから漏れた医療保険を持たない非正規雇用労働者や失業者などの貧困層に対する最低限の手当ては必要だが、医療保険を持たない貧困層を救済するためにオバマ大統領の肝いりで導入された「オバマケア」でさえ、いまだに反対意見が根強く、方々で違憲訴訟が提起されるほどだ。

 しかし、今や日本の租税負担率はそのアメリカよりも低い。
日本には義務的な年金と医療保険があるため、租税負担率に社会保障負担率を加えた「国民負担率」ではまだアメリカを少し上回っているが、それでも先進国中最低水準の41.6%(2015年度。租税負担率=24.1%。社会保障負担率=17.5%)にとどまる。

ちなみに、アメリカの国民負担率が先進国中最低の32.5%(租税負担率=24.2% 社会保障負担率=8.3%)なのに対し、イギリスは46.5%、ドイツは52.6%、フランスは67.6%だ。(国民負担率が95.5%のルクセンブルグを例外とすると)
先進国中、国民負担率が最も高いデンマークでは、所得の68.4%が税金と社会保障費として持っていかれるが、それと引き換えに医療や教育などほとんどの公共サービスが無料で受けられるし、失業保険や介護保険なども当然、日本では考えられないほど充実している。

 所得税の最高税率をあげたり、税率の累進性を高めると、労働意欲が削がれるとの説明がなされることが多いが、実際に税率が高い国で人々が真面目に働かなくなることを示すデータは見たことがないと橘木氏は言う。
低い所得税率はむしろ、政府の信用度の低さと、国民の再分配に対する否定的な姿勢を反映している。

実際、アメリカや日本に代表される、税負担が低く抑えられている国では、得てして国民が再分配に積極的ではない傾向が強いと橘木氏は言う。
一億総中流などが叫ばれ、お上意識も強い日本人ではあるが、実はその本性はアメリカ型の自助社会を志向しているというのが、格差問題を研究してきた橘木氏の見立てだ。

 この番組では何度もご紹介しているが、2007年のピューリサーチによる国際世論調査で、「自力で生活できない人を政府が助ける必要はあるか」の問いに対し、日本は先進国中ダントツとなる38%もの人が「助けるべきではない」と回答している。
何とこれは28%が「ノー」と答えたアメリカはもとより、中国や貧困に喘ぐアフリカの発展途上国よりも大幅に高いショッキングなデータだったが、実際に今、日本社会に起きている現象は、残念ながらこの調査結果と符合していると言わざるを得ない。

 その裏付けとなるかどうかは議論のあるところだが、日本では相変わらず生活保護の捕捉率が2割を割っている。
つまり実際に生活保護を受けられるほどの困窮状態にありながら、様々な理由から生活保護を受給できていない世帯が、8割以上もあるということだ。
8割の貧困家庭が放置される一方で、実際は全体の0.3~0.4%程度に過ぎない生活保護の不正受給に対しては、メディアも含めて凄まじいバッシングが行われる。

 とは言え、もし橘木氏が指摘するように、実は日本人の本性が「助け合い」ではなく「自助」にあるのだとすれば、今日の日本の問題はとても根深いものとなる。
なぜならば、困っている他人を助けるために一肌脱ぐことには否定的な一方で、精神的にも実態面でも行政への依存度が非常に高く、何かあればすぐに「お上」に頼る傾向が強いのが日本人だとすれば、日本の財政の帳尻が合わなくなるのは目に見えているからだ。

 実際、今の日本に、社会保障に頼らない老後の見通しが立っている人が、どれほどいるだろうか。
結果的に日本の社会保障制度は北欧並みの高福祉ではないにしても、公的医療保険や公的年金のないアメリカや発展途上国に比べれば、中福祉程度の水準は維持しているし、恐らくそれが国民の期待するところなのだろう。

ところが、実際日本人はアメリカ並みに自助を重んじ、他人を助けることに否定的であるが故に、高い税金による再分配を望んでいないという。
もしそうだとすると、負担はしたくないが給付だけは一定水準を要求する国民ということになってしまう。
結果的に、高負担・高福祉の北欧型、低負担・低福祉のアメリカ型に対し、現在の日本は低負担・中福祉になっているのではないか。
それでは財政が持たないのは当然のことだ。

 既に財政的には大きな赤字を抱える日本が今後、少子高齢化を迎える中、消費税率を最低でも25%~30%程度まで上げなければ、現在の「中福祉」の給付水準を維持することはできないとの試算がいろいろなところから出されている。

しかし、どうも今日の日本人の国民性は、給付を維持しながら負担水準を上げることで帳尻を合わせるのではなく、むしろ給付を削ってでも負担を下げる方を選ぶのではないかというのが、今回の橘木氏との議論から見えてきた方向性だった。
それが貧富の差を更に拡げ、貧困人口を増やすことを意味していることは言うまでもない。

 戦後の急速な工業化によって伝統的な農村共同体が崩壊し、一時期それに取って代わる機能を果たしてきた企業共同体もほぼ消滅した日本には、もはや地域共同体というものがほとんど何も残っていない。
社会の基礎を成す共同体が崩壊した社会では、「仲間」のために自分が余分な負担を負うことに意義を見いだせなくなることは、避けられないことなのかもしれない。

共同体がない社会では、そもそも「仲間」というのが誰のことなのかが自明ではなくなるからだ。
しかし、その一方で、われわれ日本人は、アメリカのような自助を前提とする弱肉強食社会に耐えていくだけの、精神的なタフさを本当に持ち合わせているのだろうか。
そもそもトランプ現象などを見るにつけ、アメリカ「自助」社会というものが今、ちゃんと回っているのだろうか。

 ここは一旦立ち止まり、今われわれが突き進んでいる道が本当に自分たちが選んだ正しい道なのかどうかについて、一考してみる価値はありそうだ。

 経済学者の橘木氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。






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# by 2006taicho | 2017-08-17 00:05 | 知っておきたいこと | Comments(0)