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「絞首刑」 青木 理

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           青木 理 講談社 2012年 kindle版 700円


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裁判官、検事と読み継いで、今度は彼らが起訴し、判決を下したことによって死刑宣告を受けた人々への取材ルポ。

実際に起きた5件の事件を取材しながら、死刑囚、その家族、被害遺族、検事、判事、宗教家、刑務官などの証言を明らかにする。

死刑廃止とか存続とか議論する前に、死刑とは実際はどういうものか、具体的にはどういう段取りで執行されるのか、作者はそこから入る。

拘置所の執行官の証言、牧師や僧侶などの証言が生々しい。

病気で車いす生活で一歩も歩けない死刑囚でも執行された事実、
あの布川事件で冤罪が明らかになった二ヶ月後、別の死刑囚の死刑執行が行われた。
この死刑囚もDNA鑑定がいいかげんで、冤罪が疑われ始めた時期だった。
それなのにまるで急ぐように絞首刑になった。
通常、死刑が確定してから実際の執行までは6~8年くらいだという。
この死刑囚の場合はまだ2年しか経過していなかった。

ある死刑囚は
「反省も後悔も謝罪もしない」
と言い放つ。
理由は
「死刑なのだから、いまさら反省しても意味がない、生き続けられるなら反省もするだろうけど、それも自分にはない」
この死刑囚は弁護人の勧めを断って、自ら死刑を確定させてしまう。

一方で遺族に謝罪の手紙を書き続け、ついには被害者遺族との面会にまでたどり着く死刑囚もいる。
その被害者遺族は、死刑の執行を中止するよう司法に訴え始める。

家族の縁を切られるのが普通だが、何年もたってから弟が面会に来るようになった死刑囚もいる。


面会時間はたったの15分間。
死刑が確定すれば、特別の関係者以外は面会もできない。
死刑執行は時の政権によってその数は違ってくる。

ある遺族は死刑が執行されたことを告げられ
「ああ、そうですか、私たちはなにもかわりません、もう忘れたいんです」
と証言する。

先進国の趨勢は圧倒的に死刑廃止だが、日本とアメリカだけは存続している。
作者は
『(物事の)中心に居る人々は苦悩し、中心から離れた人々ほど、声高に叫ぶ』
というような事を言っている。


無残な手口で肉親を殺された遺族の抑えようもない怒りは、極刑を望むだろう。
一日たりとも生きていてほしくないだろう。
一方では、国家が法律に基づいて、自国の国民(犯罪者)を殺すことは倫理上違法ではないのか、なにより人間は、罪を悔い改め変わることの可能性がある、その可能性を国家が閉じてしまってよいのか。(罪を憎んで人を憎まず)
生涯を刑務所で送ることのほうが、死刑より苦痛なのではという意見もある。

答えはあるのだろうか。
遠くない将来、その判断を求められる時がくるような気がする。







by 2006taicho | 2016-05-27 08:41 | 最近読んだ本 | Comments(0)

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by rei7955